研究課題/領域番号 |
18K04856
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
長森 英二 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (70394898)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞遊走 / 細胞接着 / 異種細胞 / 共培養 / 細胞挙動 |
研究実績の概要 |
本研究では前科研費基盤研究C(15K06580)に引き続き,遊走や接着といった各細胞の自律的な挙動に基づく自己組織化現象を視て理解し,支配的な変数(パラメーター)を推定すると共に,その変数の制御を通して細胞の動的挙動を操り,目的とする構造を設計する自己組織化現象制御技術の体系化を目指している.「A.組織内の動的細胞挙動を時空間的な解像度で捉えるための観る技術の開発」,「B.細胞挙動の理解」,「C.細胞挙動の操作」から成り,前科研費で開発したAを活かし,BおよびCに取り組んでいる。具体的には、マウス骨格筋筋芽細胞組織(積層細胞シート)内における異種細胞として、前年度に入手したマウス神経細胞とマウス血管内皮細胞を共培養するための適した条件(培地成分、接着因子の利用等)を探索した。各細胞種で異なる分化誘導条件の間を取り持ち、共培養することは容易ではなく、in vitro培養系に積み残された課題は多いことを再認識した。本研究では、取り急ぎ見出した条件にて、異種細胞が組織内において自律的に棲み分ける挙動を、特徴的な挙動の有無も含め観察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス由来骨格筋筋芽細胞組織(積層細胞シート)内における棲み分け現象を共焦点レーザー顕微鏡にて観察する対象細胞として、初年度に入手したマウス由来の血管内皮細胞と神経細胞を共培養する培地条件等を探索した。異なる分化培養条件(培地成分、接着分子の有無)を兼ね備えた共培養条件の探索には特に時間を要した。特徴的な挙動の観察や、これを制御して組織内に留める技術について検討している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に基づき検討を継続する。 血管や神経を有する複雑組織を作り上げる本研究だけでなく、組織・臓器という超高密度な細胞培養を栄養や酸素を枯渇させることなく可能とするための要素技術(組織内酸素濃度測定法や酸素運搬体の活用等)や、形成した組織・臓器を生体内環境模倣条件で機能的に培養する技術(骨格筋の筋トレ効果を得るためのパルス電気刺激等)、機能的な面から評価する技術(骨格筋の活性張力定量化技術等)についても並行して取り組んでいく。 異分野にて活躍する骨格筋研究者を分野横断的に繋ぎ、骨格筋機能を使いこなし健康増進社会(寝たきり防止等)や持続可能型社会(培養食肉や筋アクチュエーター等)を実現に導く産学連携コンソーシアムも主宰しており、本研究で得られる成果を社会発信していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
B-Aが生じた理由は、前倒し請求による設備導入の結果として残額が生じたものである。令和元年度から、企業との共同研究数が大幅に増加し、研究室にて扱う動物細胞関連の研究テーマ数の増え、従来から用いてきた炭酸ガスインキュベーターが手狭になってきた。クリーンベンチの数も増えているため作業者が頻繁にドアの開閉を行うケースも散見された。これにより、本来5%に保たれる炭酸ガス濃度が安定して維持できなくなり、研究進捗(成果の妥当性)に支障をきたす可能性も懸念されたため、本科研費課題専用の炭酸ガスインキュベーターを令和元年度に前倒して設置することで、研究環境のロバスト性を高めた。進捗に必要な高額な試薬類は平成30年度にほぼ揃えており、令和2年度は培地などを研究室の個別財源で賄うことが可能であるため、令和2年度の研究進捗に問題はない。繰越金を有効に活用して保存がきかない培地や観察試薬を適宜補充しつつ研究計画を遂行していく。
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