研究課題/領域番号 |
18K04979
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西田 宗弘 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (10329112)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズモニクス / トポロジー / 共鳴状態 / ファノ共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的は,中心穴がある蜂の巣格子金属ナノホール列系におけるトポロジカルな共鳴状態の存在を立証することであるが,その為には,境界線を有する非周期系における共鳴状態の探索が必要不可欠である.これを十分正確に行うには,当初想定していたよりも多くの計算機リソースが必要な事が判明した.そこで,共鳴状態の探索をより効率良く行える系の考案と,新たな計算手法の開発を試みた. その結果,より優れた候補系として,誘電体導波路と金属ナノホール列との接合系を考案する事が出来た.この系では,結合モード法と多層膜での多重散乱の理論を組み合わせた方法が有効で,複数の共鳴間の結合係数や,各々の共鳴の放射損失,内部損失を明確に決定出来る事を発見した.さらに,連続準位中の束縛状態(BIC)が実現することを見出し,その実現条件について新しい知見を得ることができた.この成果について現在論文執筆中である. また,全反射減衰法で用いられている系の様に透過が生じない系の利用を検討した.透過過程が関与しないことで,共鳴状態をよりシンプルなモデルで記述可能と予想していたが,この様な系でもFano共鳴が起こり得ることが2018年に発表され,従来の定式化には含まれない重要な要素が存在することが示唆された.そこで,新たに改良したニ種類の結合モード法を用いてこの系の解析を行ったところ,Fano共鳴が起こるメカニズムの詳細が明らかになると共に,この現象を活用した新しいセンシング法を考案することが出来た.この成果についても現在論文執筆中である. 今後は,これらの候補系のトポロジカルな性質について,今回新たに開発した研究手法を用いて詳細に検証して行く予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の通り,要求される計算機リソースが想定よりも大きく,予定通り進めていく事は困難と思われたため,当初の計画を修正し,新たな計算手法の開発や新たな系の考案を行った.そのため,当初予定していたトポロジカルな共鳴状態の存在を立証するところまでは研究を進める事が出来なかった.ただし,結果として予想外に多くの新しい知見が得られ,共鳴状態の理解が進んだことと,有効な研究手法を確立する事が出来たことから,今後の研究の進展については大きな支障は無いと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
蜂の巣格子ナノホール列と誘電体導波路を接合した系に対して,結合モード法と多重散乱法を組み合わせた理論を用いて,バルクのバンド反転とギャップレス・エッジ状態の形成の確認をまず行う予定である.新たに提案した系に対しては,共鳴振動数,放射ロス,内部ロス,結合係数などが,反射スペクトルの結果から推定出来るため,大幅な時間短縮が可能と考えている.今年度中にエッジ状態の特性評価まで終わらせる予定である.ここまでの内容を論文にまとめて発表した上で,来年度以降は共鳴状態のトポロジーに関する一般論の構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
教務関係の業務の為に当初予定していた学会出張が出来なかったこと,及び,研究計画の変更による遅延から論文投稿が年度内に間に合わなかったことによる. 次年度の使用計画としては,国際会議1回,国内会議3回の出席のための旅費,及び参加費として55万円,研究成果投稿料,英文校閲料として30万円,数値計算補助に対する謝金として10万円,図書費,消耗品費として10万円を予定している.
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