本年度は,共鳴状態のトポロジー変化のメカニズム解明を目標に,同軸型金属ナノホールの2次元配列系に特に注目して研究を行った.まず,同軸型金属ナノホール中の導波モードを求める数値計算プログラムを作成し,分散関係とモード場分布を自動で求められるオープンソース・ソフトウェアとしてまとめ,公開した(備考).さらに,空間的結合モード法にこれを組み込むことにより,昨年度用いていた厳密結合波解析(RCWA)法に比べ数百倍高速に散乱行列を求められるシミュレーション・ソフトウェアを開発した.これによって,共鳴状態のバンド構造と共鳴状態からの放射が持つ偏光渦構造を系統的に調べることが可能になり,金属膜厚による共鳴状態のトポロジー変化の様子が明らかになった.結果を詳しく解析することにより,結晶の対称性に由来するバンドの縮退点,バンドの接触によって形成される例外点,連続準位中の束縛状態(BIC)の3者が偏光特異点となり偏光渦構造を支えていることが確認でき,これらによって引き起こされる偏光渦構造の変化のメカニズムを解明することが出来た.予想していなかった幾つかの困難のためソフトウェアの開発が遅れ,研究期間内に上記に関する成果発表が出来なかったが,現在論文執筆中であり,近々投稿予定である. その他の研究成果としては,全反射光の高効率取り出し法に関する検討が挙げられる.これまでの研究で得られた金属グレーティング系に対する知見を活かして,2層金属グレーティング系の回折効率スペクトルにおける共鳴特性のメカニズム解明,及び,グレーティング構造の非対称性による高効率化の発見に成功した.
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