研究課題/領域番号 |
18K05003
|
研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
井岡 郁夫 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (10354804)
|
研究分担者 |
小河 浩晃 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (10414559)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 放射線励起 |
研究実績の概要 |
原子炉内の炉内材料の腐食機構解明では、水/水蒸気の放射線分解によって生成した活性なイオン種量が重要となる。実炉環境で見られる一桁以上高い腐食速度は、従来モデルの水/水蒸気の放射線分解から算出されるイオン種量からでは説明できない。従来モデルの欠点は、材料の極表面近傍のみに現れる「表面励起効果」を考慮していないことである。我々は、独自に、「表面励起効果」に着目した「新しい腐食促進モデル」を提案する。表面励起効果は、材料の表面積に依存して増大し、材料表面近傍でのイオン種の生成量を増加させる。特に、隙間やクラック等の場所では、表面励起効果は材料の腐食に大きく作用し、その腐食を促進させる。本研究では、「新しい腐食促進モデル」を展開し、「表面励起効果起因のイオン種の増加量」から、原子炉内の腐食促進機構の解明を定量的に行うことを目的とする。「表面励起効果」の測定は、Co-60照射下でIn-situで実施しなければならない。しかし、電子機器類は、Co-60照射により故障するため、その照射下では使用できない。そこで、pH法と電気伝導率法を採用する。具体的には、Co-60照射下(10kGy/h)で、水の放射線分解による水の解離度をpH法と電気伝導率法で測定し、イオン種(H+、OH-)量を算出する。当該年度では、ガンマ線照射中では、崩壊熱により、試験水が加熱され、3-5℃程度の温度増加がみられるため、pH電極の内部液の温度増加による起電力の変化を調べた。その結果、本照射試験内の時間(約30分)では、pH電極の起電力は安定していることを確認した。今後は、本結果を腐食機構究明に繋げて行く。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、所属機関におけるテレワーク等の実施により、研究活動に対する制限が生じたことで、当初計画どおりに照射試験が実施できなかったため、やや遅れていると判断する。遅れについては、令和3年度にリカバリーできる見込みである。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの結果を生かし、表面励起効果に起因した腐食機構解明のための実験を進める。また、研究の枝分かれとして、放射線照射下のpH計測を念頭に置いた電極の開発にも目を向け、特許等の工業所有権の取得も研究スコープに入れて、それを目指して、実験を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度においては、当初計画に従い研究を進めてきたが、急遽、pH電極の内部液の起電力安定性に科学的な懸念が生じたため、令和2年度の研究計画の一部を変更して、pH電極の内部液の起電力安定性の確認評価研究を中心に進めることとした。研究計画の変更に伴い、令和2年度分経費の執行計画も変更したこと及び新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて照射試験計画にも大幅な変更が生じたことから次年度使用額が発生した。次年度使用額は、令和3年度分経費と合わせて、研究計画に従い、実験及び試験に係る費用として使用する。
|