原子炉内の炉内材料の腐食機構解明では、水/水蒸気の放射線分解によって生成した活性なイオン種量が重要となる。実炉環境で見られる一桁以上高い腐食速度は、従来モデルの水/水蒸気の放射線分解から算出されるイオン種量からでは説明できない。従来モデルの欠点は、材料の極表面近傍のみに現れる「表面励起効果」を考慮していないことである。我々は、独自に、「表面励起効果」に着目した「新しい腐食促進モデル」を提案する。表面励起効果は、材料の表面積に依存して増大し、材料表面近傍でのイオン種の生成量を増加させる。特に、隙間やクラック等の場所では、表面励起効果は材料の腐食に大きく作用し、その腐食を促進させる。本研究では、「新しい腐食促進モデル」を展開し、「表面励起効果起因のイオン種の増加量」から、原子炉内の腐食促進機構の解明を定量的に行うこ とを目的とする。「表面励起効果」の検証は、Co-60照射下で、「水-材料」系から発生する水素ガスと酸素ガスを測定することで実施する。具体的には、バイアル瓶に水と材料を入れる。Co-60照射を24時間実施した後、発生した水素ガスと酸素ガスをガスクロマトグラフィーで濃度測定を実施する。材料には、燃料被覆管材の主成分であるZrを用い、原子炉環境下を想定して、その表面には、ZrO2の皮膜を熱酸化処理して形成させる。また、比較材として、Ptを用いた。その結果は、Zr及びPtでは8000ppm程度の水素発生が見られた。酸素ガスの発生も確認できたが、大気成分の酸素の混入が疑われるため、正確な評価はできなかった。本結果は、今後の腐食機構究明に繋げて行く。
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