研究実績の概要 |
当該年度では、種々の1-ヘテロ原子置換アルキルp-トリルスルホキシドと有機金属試薬を用いて1-ヘテロ原子置換有機金属を発生させ、その反応性について研究した。1位に脱離基としてハロ基を有する有機マグネシウム種や有機リチウム種を発生させると、1,2-水素移動が起こりアルケンが生成した。一方、脱離基としてアリールチオ基を有する有機マグネシウム種ではプロトン化物が生成した。ハロ基を有する有機マグネシウム種や有機リチウム種はカルベンと類似した反応性を有するのに対し、アリールチオ基を有する有機マグネシウム種はカルボアニオン的な反応性しか持たないことが明らかとなった。 脱離基としてクロロ基を有する有機マグネシウム種、すなわちマグネシウムカルベノイドに脂肪族や芳香族のGrignard試薬、ヘテロアリールリチウム、リチウムチオラート、リチウムアミドといった求核剤を反応させると、求核剤が導入された化合物が生成した。マグネシウムカルベノイドと求核剤を反応させると、有機マグネシウム中間体が生成するとみられるが、この有機マグネシウム中間体にアルデヒドやクロロギ酸エチルといった求電子剤を反応させると、3成分が連結された化合物が生成した。 脱離基の種類が有機金属の構造に与える影響を調べるために、DFT計算で1-ヘテロ原子置換有機金属の構造最適化を行った。ハロ基を有する有機マグネシウム種や有機リチウム種では、典型的な有機分子と比較して、炭素―ハロゲン結合の顕著な伸長がみられた。また、金属とハロゲンが結合した炭素原子周りの平面性が増大していた。1-ヘテロ原子置換有機金属の1,2-水素移動の遷移状態を探索し活性化エネルギーを計算した。IRC計算も行った。
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