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2020 年度 実施状況報告書

高活性ガラス媒体中における白金族金属の水溶化メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K05199
研究機関福井大学

研究代表者

岡田 敬志  福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (30641625)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード難水溶性白金族化合物 / 化学状態 / 価数 / 配位数
研究実績の概要

当初、溶融媒体中において未溶解PGMsが存在すると予想していた。ところが、金属ラジウムの加熱処理物に対して、水、0.01M塩酸、0.1M塩酸、1M塩酸による逐次抽出を行ったところ、計90%以上のパラジウムが溶解した。いずれの画分においても、オキシアニオン源であるホウ素とアルミニウムが検出された。よって、予想とは異なり、大部分のパラジウムが溶融媒体中に錯体として溶解したものと推察される。
そこで、研究計画を修正し、媒体中における難水溶性白金族化合物に着目した。K2O-B2O3媒体中において、金属パラジウムあるいは金属ロジウムを1000℃で加熱し、生成物を水処理した。このとき、溶解せずに残留した固形物中には、白金族(PdあるいはRh),K, Al, Bが含まれていた。そこで、これらの化学状態を分析した。X線光電子分光分析より、Pd 3d5/2シグナルのピーク位置は338eVであり、金属Pdのピーク位置(335eV)よりも高エネルギー側にシフトしていた。これは4価のパラジウム酸化物(PdO2)のピーク位置に等しい。よって、パラジウムは高い酸化状態になっていることが示唆された。また、ラマン分光分析より、化合物中においてアルミン酸はAlO4、ホウ酸はdiborate groups, metaborate groupとなっていることが示された。このことから、高価数のパラジウムに上記アルミン酸やホウ酸が配位子として結合し、さらにカリウムイオンが結合することで難溶解性パラジウム化合物が形成されているとみなさせる。ロジウムに関しても、同様の結果が得られた。
難水溶性白金族化合物における各成分の量論比については、加熱条件によって異なることがわかった。特に加熱時間が長くなることによって、ホウ素とアルミニウム比(B/Al)が増加し、それによって難水溶性パラジウムの生成量が増加する結果となった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初、予想していた未溶解PGMsは確認できなかった。そのかわり、難水溶性PGMが金属体のPGMsではなく、高酸化状態にあるPGMsにカリウムイオン、ホウ酸、アルミン酸が結合した化合物であることがわかった。
そして、加熱時間とともに、化合物中におけるホウ素とアルミニウム比が変化し、それによって溶解性が低下することもわかった。これはPGMs水溶化機構の解明に資するのみならず、PGM水溶化プロセスの高効率化にも寄与する。

今後の研究の推進方策

溶融媒体中で合成したPGMs化合物に対して、水あるいは酸による溶解処理を行い、各成分の溶出量を調べる。成分ごとに溶出率の経時変化が異なれば、化合物の構造を評価するうえで重要な知見となる。このような情報を得ることによって、水溶性白金族化合物の構造を評価し、メカニズム解明を推進する。

次年度使用額が生じた理由

前年度に生じた未使用額のうち、今年度消化しきれなかった分が、次年度使用額として残っている。今年度の計画にしたがって、未使用分を有効に活用したが、全額使用するまでには至らなかった。
次年度は、PGM化合物中成分の溶出挙動を詳細に追跡することを目指し、特に溶出量の経時変化を評価することから、多くの実験を行う予定である。それにかかる試薬の購入に、次年度使用額を充てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Reactivity of metallic palladium in a K2CO3-K2O-B2O3-Al2O3 melt2020

    • 著者名/発表者名
      Takashi Okada, Fumihiro Nishimura, Susumu Yonezawa
    • 雑誌名

      Results in chemistry

      巻: 2 ページ: 1,9

    • DOI

      10.1016/j.rechem.2020.100077

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] カリウムホウ酸塩中における可溶性ロジウム化合物の生成挙動2020

    • 著者名/発表者名
      佐竹悠理、岡田敬志
    • 学会等名
      日本化学会近畿支部北陸地区講演会と研究発表会
  • [産業財産権] 白金族金属の回収方法、白金族金属含有組成物およびセラミックス材料2021

    • 発明者名
      岡田敬志、谷口義弥、西悠斗
    • 権利者名
      国立大学法人福井大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      FU20427
    • 外国

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公開日: 2021-12-27  

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