研究課題/領域番号 |
18K05380
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
林 晋平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員 (40781323)
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研究分担者 |
石川 覚 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (40354005)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒ素 / 米 / イネ / 土壌 / 変異 |
研究実績の概要 |
玄米のヒ素濃度が低下したコシヒカリ変異体las1とlas3について野生株とのヒ素分布の違いを明らかにするため、組織別にヒ素濃度を測定した。どちらも玄米のみならず植物体地上部の広範囲でヒ素濃度が低下していることがわかり、両変異体とも土壌から地上部へのヒ素の移行が減少していることが示唆された。また、las1が幼植物体でも低ヒ素形質を示した一方でlas3の幼植物体は低ヒ素形質を示さなかったことから、両変異体の低ヒ素化メカニズムが異なることがわかった。 las1の低ヒ素形質と連鎖する変異が生じた遺伝子の野生型をlas1に導入し発現させた結果、玄米ヒ素濃度が野生型と同程度に変化し、相補性が認められた。las3の低ヒ素形質と連鎖する変異が生じた酵素遺伝子について複数のallele変異体を入手し分析した結果、この酵素活性を低下させる変異をもつallele変異体では玄米ヒ素濃度の低下が認められた。以上の実験から、これらの遺伝子に生じた変異が低ヒ素形質の原因であることが遺伝学的に証明された。 las1の原因遺伝子がコードする膜タンパク質LAS1にGFPを融合し、蛍光観察によりイネにおける細胞内局在を調べた結果、LAS1は根において原形質膜に極性をもって局在することがわかった。las1では、LAS1の膜局在に必要なタンパク質ドメインが変異により欠損していた。 今後、植物体におけるタンパク質の量や局在をさらに詳細に解析するため、las1とlas3の原因遺伝子がコードするタンパク質を特異的に認識する抗体を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は、本研究推進の基礎となる課題として、元素測定によるヒ素の挙動把握と相補性試験やalleleの解析による原因遺伝子の証明を計画していた。年度内にこれらを全て達成し、次年度以降の計画に前倒しで取り組み始めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、原因遺伝子産物の詳細な特徴づけを進める。また、原因遺伝子のパラログ遺伝子についても注目し、変異体を入手または作出し形質を調べる。得られた情報から変異体が低ヒ素形質を示すメカニズムについて仮説を立て、実験的に検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりも安価で入手できた消耗品があった。また、当初に計画した実験(組織切片の作製)の目的をより安価な新しいアプローチ(組織透明化等)で達成できる見込みが生まれた。これらの理由により生じた次年度使用額は、原因遺伝子産物の解析に伴い新たに必要となる実験への対応に充てる。
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