• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

二次代謝産物生合成において細胞質型と液胞型酵素はどのように使い分けられるのか?

研究課題

研究課題/領域番号 18K05466
研究機関東洋大学

研究代表者

佐々木 伸大  東洋大学, 食環境科学部, 教授 (80422088)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードポリアシル化アントシアニン / グルコシルトランスフェラーゼ / アシルトランスフェラーゼ
研究実績の概要

キンジソウ(Gynura bicolor)のポリアシル化アントシアニンについて、昨年度までにアントシアニンの1つ目の有機酸であるマロン酸転移はacyl-CoA依存的、すなわち細胞質型の酵素に行われることが判明していた。また、昨年度実施したRNA-seq解析によって、このacyl-CoA依存型アシルトランスフェラーゼ(AAT)のcontigを複数獲得していた。今年度はこれらのcontigについて推定のfirst ATGを含む配列を選抜し、この配列情報に基づいて設計したプライマーを用いて3‘-RACE法によって、3種類の全長ORFをクローニングした。現在これらの組換え酵素のAAT活性について評価中である。
ポリアシル化アントシアニンを持つ紫キャベツ(Brassica oleracea var. capitata f. rubra)において、最初の3分子のグルコースの転移反応はUDP-glucose依存的に細胞質型の酵素(UGT)によって触媒されることが予想された。そこで、昨年度までにRNA-seq解析によって獲得されていたUGT相同contigの中から、推定のfirst ATGを含み、ほぼ紫キャベツ葉のみで発現が認められた4種類の相同遺伝子配列を獲得した。これらについて、組換え酵素活性を検討したところ、1種類はアントシアニン3GT活性を、2種類がアントシアニン3GGT活性を、1種類がアントシアニン5GT 活性を示すことが判明した。また、葉から抽出した粗酵素液を用いて、アントシアニンとsinapoyl-glucoseを用いて酵素反応を行った。反応産物をHPLCで分析したところ、アントシアニンへsinapoyl基が転移したと思われるピークが確認された。このことから、紫キャベツにおいてアントシアニンへのアシル基転移反応は液胞型の酵素によって触媒される可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では糖や有機酸で高次に修飾されたアントシアニン分子について、どのような酵素が関わって生合成されるかを明らかとすることによって、それぞれの反応が細胞質基質で、あるいは、液胞内で起こるかについて推定することを目的としている。昨年度までに、キンジソウと、紫キャベツにおいて、植物から抽出した粗酵素液を用いた酵素反応の評価から、初期の修飾反応がいずれも細胞質型の酵素によって行われる可能性を示した。本年度はこれらの酵素をコードしている遺伝子を明らかとするために、cDNAのクローニングを行い、それらの組換え酵素活性を評価した。その結果、紫キャベツでは、アントシアニンの最初の3つのグルコースを転移する遺伝子が同定された。また、紫キャベツにおいては、このグルコースの転移反応のあとの有機酸転移反応が液胞型の酵素によって触媒されることを示唆したことにより、どの反応がどのタイプの酵素によって触媒されているかが明確になりつつあり、当初の目的通り概ね順調に進んでいると判断した。

今後の研究の推進方策

キンジソウについては、これまでにRNA-seq解析によって獲得されているアントシアニン修飾に関わると目されるcontigの情報を基に、全長ORFを含むcDNAを単離する。それぞれの候補遺伝子について組換え酵素を用いて、アントシアニンの糖転移反応やアシル基転移反応について検討することで、アントシアニン修飾に関わる遺伝子の同定を進める。また、キンジソウ葉由来の粗酵素抽出液を用いて、生体内でのアントシアニン修飾反応がどのような順番で行われるかについて推定し、上述の結果と合わせて、キンジソウのポリアシル化アントシアニンがどのような酵素群によってどのような順番で生合成されるかについての解析を行う。
紫キャベツについてはこれまでに同定された糖転移酵素について、酵素学的解析を行うことで、アントシアニン生合成との関与を明らかとする。また、糖転移反応に続くアシル基転移の酵素活性が粗抽出液中存在すると考えられたことから、この酵素についての諸性質と、これをコードするcDNAの単離を進める。また紫キャベツの主要アントシアニンは2分子のアシル基で修飾されていることから、2つ目のアシル基転移酵素についての酵素活性と、それをコードするcDNAの単離を進める。

次年度使用額が生じた理由

昨年度購入した試薬類で本年度の実験が遂行できたため、当初使用予定であった消耗品類費分が繰越として生じた。
次年度は、分子生物学的手法にかかる試薬やキット類、また、HPLC用溶媒等の購入費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Order of glucosylation reactions in the biosynthesis of anthocyanins in red cabbage.2019

    • 著者名/発表者名
      Nobuhiro Sasaki, Ayaka Ogino, Natsumi Okawa
    • 学会等名
      10th International Workshop on Anthocyanins and Betalains.
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi