研究課題
基盤研究(C)
我々は糖尿病マウスを用いた先行研究において、腸内細菌叢の異常が急性期虚血性脳卒中の転帰に関連することを報告した。近年の研究により、腸内細菌叢は腸管の免疫細胞の分化制御に重要な役割を担うことが指摘されている。本研究では低脂肪食を投与した正常対照マウスと比較して高脂肪食を投与した糖尿病マウスでは、小腸の粘膜固有層におけるTh17細胞が増加し、さらに脳梗塞後において重度の神経障害を認めた。これらの結果により、腸管リンパ球が急性期虚血性脳卒中の転帰に関連することが示唆された。
神経学
脳卒中は運動麻痺などの重篤な後遺症を起こすことが少なくなく、要介護の主要な原因疾患である。急性期脳梗塞の組織障害を抑制し、後遺症を軽減するための治療法はいまだ不十分である。腸が脳へ影響を及ぼすメカニズムは未だ十分に解明されていないが、本研究により急性期虚血性脳卒中の病態には、腸管リンパ球が関与する可能性が示唆された。さらなる研究の推進により急性期脳梗塞における新たな脳保護治療法を確立することで、脳梗塞患者の予後改善と要介護者の減少、健康寿命の延伸につながることが期待される。