研究課題/領域番号 |
18K05616
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山根 京子 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (00405359)
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研究分担者 |
矢野 健太郎 明治大学, 農学部, 専任教授 (00446543)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ワサビ / 辛味成分 / グルコシノレート / UPLC / 栽培化 / 香辛料 / 進化 / 遺伝資源 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は、ワサビの辛味成分がどのように成立したのか、その機構を明らかにすることである。そのためには、まずは種としてのワサビがどのように成立したのかを明らかにする必要がある。当研究室では、葉緑体全ゲノム配列を用いて、日本のワサビ属植物が共通祖先からいつ頃分化し、どのようにして成立したのかを推定した。その結果、ワサビは日本海要素植物であり、日本海側の多雪地帯に適応して進化したことがわかった。ワサビの辛味成分の本体であるアリルイソチオシアネートは揮発性であり、これまでガスクロマトグラフィー(GS)を用いて検出されてきたが、本研究では、前駆体物質であるグルコシノレート(GLS)に関して、高速液体クロマトグラフィーにより、日本のワサビ属植物のなかでの多様性を調査した。野生種も含めた、多くの検体数を調査した例がなかったので、条件設定から開始した。その結果、日本のワサビ属植物は実に多様なGSLを含んでおり、とくに野生種では、系統ごとに組成が大きく異なっていることがわかった。興味深いことに、日本のワサビ属植物のなかでも、一部の系統群でしかみられない成分も見つかり、さらに、この成分は、積雪量と相関関係が示された。また、アブラナ科植物は、冬期の低温の後で花を咲かせる春化という性質や、GLS合成経路を獲得したと考えられている。ワサビの辛さが、こうした日本海側の過酷な環境への適応形質である可能性が浮かび上がってきた。また、ワサビと近縁な野生種であるユリワサビは、ワサビとは異なる環境に自生している。こうした野生種と成分の違いを比較することで、ワサビにしかない特徴を考察した。その結果、ワサビはアリルイソチオシアネートの前駆体であるシニグリンを多く含んでいることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グルコシノレートの生合成経路の最終産物であり、辛味成分の本体であるアリルイソチオシアネートを計測するために、ガスクロマトグラフィーを用いた分析を計画し、条件設定をすすめていたが、予期せぬ事態で急遽機械が使えなくなってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
ガスクロマトグラフィーは利用できなくなったものの、今年度はゲノムデータを用いてグルコシノレート生合性経路を検証する予定である。また、高速液体クロマトグラフィーを用いた成分分析では、大量のデータが集積しているので、日本のワサビ属植物が、移動し、分布を拡大するなかで、辛味成分がどのように進化したのかを検証する。野生種における辛味成分の進化に関してだけでなく、栽培種の成立と辛味成分の変化についても考察する。ワサビの場合は、とくにグルコシノレートの炭素数の違いが顕著であるため、長鎖グルコシノレートはどの段階で獲得され、どのように栽培ワサビに影響を与えたのかについて、詳しく分析する予定である。また、最終産物であるアリルイソチオシアネートの生合成に関連して、加水分解酵素であるミロシナーゼ遺伝子についても分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は研究のとりまとめのために、学術論文投稿費用や英文校正費用や、どうしても必要な実験の費用のために用いる。
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