本研究では寄生蜂キアシアリガタバチが寄主ヒメマルカツオブシムシ幼虫の有害な毛をアリなどの捕食者への防衛戦略として利用するという寄主―寄生蜂―アリの3者系の仮説を調べた。まずハチを誘引する寄主の物質を定性的に確認したが特定できなかった。寄主の毛のアリへの有害性とハチへの無害性を行動実験で明らかにした。有害性は毛の絡みつきによることと、その毛の特徴的な微細構造を電子顕微鏡で確認した。またハチが毛に対応する生理学的コストは少なかった。系統解析のためにハチの遺伝子の一部を明らかにした。このように、この3者系では特にハチが寄主に対して特徴的な性質を持つことが分かったが、仮説全体の立証は今後の課題である。
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