研究課題/領域番号 |
18K05752
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
神松 幸弘 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (20370140)
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研究分担者 |
丸山 敦 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (70368033)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 安定同位体 / 小型サンショウウオ / 食性 / 粘液 / 微生息場所 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、小型サンショウウオの食性を知る上で、これまで必要であった解剖あるいは筋肉や血液などの化学分析に頼らず、個体にダメージを与えない体 表粘液を使った分析方法で食物推定をする方法を確立し、これまで希少種ゆえに大量のデータを集めることが難しかった小型サンショウウオ類の生態系における 栄養段階、生態的地位を明らかにすることを目的としている。研究課題の遂行に向けて、まずは、試料の収集と同位体分析を進め、データを蓄積することがもっ とも重要な作業事項である。開始年度である2018年は日本各地に生息する小型サンショウウオ類の体表粘液を採集することに全力で取り組んだ。主な採集調査 は、北海道(エゾサンショウウオ、きたサンショウウオ)、福島(ハコネサンショウウオ)、宮城(トウホクサンショウウオ)、富山(ハクバサンショウウオ)、高知(イシヅチサンショウウオ)である。サンプルの収集状況は、種によって個体数に差が生まれた。当初の予定よりも大幅に捕獲できた種と予定より大幅に少ない標本しか得られなかった種の開きは大きい。種間比較を行う際に各種のデータセットをどのような水準で揃えたら良いか今後重要な検討課題となるが、それらは、今後採集予定である他種の収集状況および安定同位体分析によるデータの種間、種内のばらつきなどから総合的に判断する予定である。 同所的分布の少ない日本国内のサンショウウオと比較して、同所的に多様性の高いアメリカのサンショウウオとその食性の種間差の違いを比較するのが本課題の目的であるが、現状の実効性について、情報収集に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、サンショウウオ体表粘液の炭素および窒素安定同位体比を計る上で、体表粘液をグラスフィルターに付着し得たサンプルと、サンショウウオの体表にメソポーラスシリカをふりかけ、それに付着する粘液の炭素および窒素同位体比の比較検討を前年度の懸念から進めるために実験を企画したが、実験最中の夏季に実験室の空調のトラブルに見舞われ、サンショウウオが全滅し、失敗に終わった。 また、アメリカへの調査計画もコロナ禍により中止となった。
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今後の研究の推進方策 |
自然に分泌される粘液が蒸留水に溶け込むのを待つ方法の弱点は個体が尿をする場合があること(値が大きく変化する)、時間がかかる(体長10cm以下の個体では1時間以上)ことであった。現在までのところ、実際に野外採集の際にも第1、第2の双方のサンプル採取を併用して行っている。この結果をもとに粘液採集方法に関する研究成果をまとめるため同位体分析行ったところ、野外個体では、第1、第2の採集方法で値が大きく異なるケースがあることが度々見られることが明らかになった。飼育個体と野外個体で体表粘液の採集方法ごとに違いが生まれる要因は、まず、野外個体は人に慣れていないため、強いストレスがかかり、異なる粘液成分(サンショウウオは2種類の粘液を持つ)を分泌することや尿を多く出すことが想定される。次に、野外個体は繁殖期のみに採集することができ、その場合は水中型と呼ばれる水分バランスの異なる体型をしている場合がありそのことが原因になる可能性がある。これまでのところ、同位体分析によるエラーではないことが確かめられており、原因を特定する準備を進めたが、本年度は、空調設備のトラブルにより、実験が失敗したため、引き続き実験遂行の必要がある。 実験計画を予定通り遂行できれば、当初の目的は確実に達成できるものと考えている。そこで、研究期間の延長の申請も視野に含め、引き続き研究遂行に専念したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
87万円の残額が生じた理由はアメリカでの調査を延期したためで、次年度に予定しているが、新型コロナウイルスの影響で実施不可能な可能性があり、本研究期間の延長も含め対策を検討している。また、今年度の飼育実験の失敗から実験手法を改良し、再度実験を行うことも計画している。
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