樹木の内部での通水経路を細胞レベルで把握するためには,トレーサーを幹などの切断部位から導入して解析する手法が広く行われている.しかし,切断を伴うトレーサー導入は樹木の自然状態での水の移動様式を示していない可能性がある.そこで本研究では樹木の根から葉に至る通水ネットワークの全体像を切断などの破壊処理の影響を回避して明らかにすることを目的として,ヤナギ属の種で当年根のみからなる個体の作成法を確立した.次にこの個体を用いて当年根のみに重水を含むトレーサーを導入した場合と,幹を切断してトレーサーを導入した場合とを比較したところ,両処理間でトレーサーの上昇経路が大きく異なることが明らかになった.
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