研究課題/領域番号 |
18K05816
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
中本 正俊 東京海洋大学, 学術研究院, 博士研究員 (80447721)
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研究分担者 |
坂本 崇 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (40313390)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水産育種 / ゲノム編集 / アユ / 性分化 / 性決定 |
研究実績の概要 |
本研究では水産重要種であるアユの性決定遺伝子をモデルとして、ゲノム編集技術とターゲットシークエンス法を駆使して、遺伝学的に同定された目的形質と連鎖するゲノム領域内に位置する多数の候補遺伝子の中から責任遺伝子を効率的にスクリーニングするための水産育種技術基盤を開発することを目的とする。アユはXX-XY型の性決定様式でありY染色体上の性決定遺伝子によって性が決まると考えられている。これまでの遺伝学的解析により。雌個体には存在せず、雄個体のみに存在する雄特異的な性決定候補領域が同定されている。令和元年度は引き続き性決定ゲノム領域に位置するいくつかの候補遺伝子について、精巣および卵巣におけるmRNAの発現を解析した。またこれらの候補遺伝子についてcrispr/cas 法によるゲノム編集を行うためのガイドRNAを合成し、Cas9タンパク質とともにアユ受精卵へのマイクロインジェクションを行った。ガイドRNA濃度を25、50、100、200 ng/μl、Cas9タンパク質濃度を 100、200、400 ng/μl、の条件でマイクロインジェクションを行い、至適条件を検討した。その結果、ガイドRNA濃度25~100 ng/μl、Cas9タンパク質濃度 100 ng/μlの条件が最も生残率が高いことが明らかとなった。また、生残個体の一部からDNAを抽出し、標的領域の塩基配列を解析した結果、複数の個体で3 bpから26 bpの塩基の欠失が検出され、アユにおいてもcrispr/cas 法により効率的に変異が導入でできることが示された。現在、残りの個体の飼育を進めており、雌雄の表現型が判別できる時期になり次第、ゲノム編集による変異の影響を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り進捗した。令和元年度は雄特異的ゲノム領域に位置する候補遺伝子のクローニングとガイドRNAプラスミドの作製、およびアユ受精卵へのマイクロインジェクションの条件検討を行った。ガイドRNAおよびCas9タンパク質濃度の検討を行い生残率への影響が少ない条件を決定した。また、標的領域に実際に変異が導入されていることが確認された。現在飼育中の個体における変異と表現型の解析、および今年度、引き続きアユ性決定遺伝子候補のノックアウト実験を行うことで本研究の目的が達成できることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、既知の遺伝子との相同性や生殖腺での発現パターンなどからこれまでにスクリーニングしたアユのY染色体上の性決定ゲノム領域に位置する複数の候補遺伝子について、一度に複数の遺伝子に対するガイドRNAとCas9タンパク質を混合してアユ卵にマイクロインジェクションにより導入しノックアウトし、候補遺伝子のうちいくつかがランダムにゲノム編集された可能性のあるアユ集団を作出する。また昨年度作出した複数の性決定遺伝子候補のゲノム編集アユについて鰭および生殖腺の外部形態から雌雄を判別できるサイズまで飼育を行い、遺伝的性と性的な表現型が一致しない個体、すなわちゲノム編集により性転換が起こっていると考えられる個体を探索する。鰭からDNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたターゲットシークエンスにより変異導入部位の塩基配列を決定する。また生殖腺の形態の組織学的解析およびRT-PCR法やin situ hybridization法等による性分化マーカー遺伝子の発現解析を行い、候補遺伝子のゲノム編集の影響を明らかにする。ゲノム編集魚における候補遺伝子内の変異の有無と目的形質の表現型の相関関係を集団全体として解析し責任遺伝子の同定をする。すなわち目的形質に影響がみられなかった個体ではゲノム編集による変異がなく、影響が観察された個体においてのみ変異が導入されていた遺伝子が責任遺伝子であると考えられる。
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