研究実績の概要 |
ベクターに組み込んだ抗原遺伝子が細胞内で発現した際に、抗原のプロセシング(分解)が促進され、免疫系に到達しやすくするために、PEST配列をN末とC末の両方に組み込んだSIV抗原遺伝子を導入したBCG Tokyoウレアーゼ欠損株(rBCG-SIVgag, -SIVpol, SIVrtn, SIVenv)及び同様の抗原遺伝子を導入したワクシニアウイルスLC16m8Δ株をワクチンとして用いた。 インド産アカゲザル3頭に、4種のrBCG混合物を皮内接種後8週で1回目のワクシニア(4種の混合物)接種を行い、さらに8週後に2回目のワクシニア接種を行った。2回目のワクシニア接種8週後のin vitro SIV suppression assay (ISA) 測定で、3頭の内1頭で強い活性(キラーT細胞の活性)を確認した。サル免疫不全ウイルス (SIVmac 251) 攻撃接種の結果、残念ながら3頭全頭でSIV感染が成立したが、ISA活性が強かった1頭で、セットポイントのウイルス量をほぼ検出限界に近いレベルまで抑制し、キラーT細胞応答とSIVmac感染防御能が相関することがわかった。これは、ウレアーゼ欠損BCG-組換えワクシニア-組換えセンダイウイルスベクター複合ワクチンのカニクイザルでの感染防御能評価の結果(Kato et al. Journal of Virology, 2021)と一致していた。いかにしてSIV (HIV)特異的キラーT細胞を強力に誘導し、effector memory T細胞やresident memory T細胞といった、感染時に迅速に反応してキラーT細胞として働くことができる免疫記憶を維持できるかが、本レジメン改良のポイントと考えられる。
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