研究実績の概要 |
チトクロムc酸化酵素(CcO)は呼吸鎖末端酵素で、酸素の還元とそれに同期したプロトンの能動輸送を担っている。活性中心としてCuA, heme a, heme a3, CuBを有する膜蛋白質である。酸素還元反応の際にCuA, heme aを経て酸素還元中心heme a3, CuBに電子が伝達されるのに同期して、プロトンが能動輸送される。酵素反応サイクル中の幾つかの中間体及び中間体類似の構造を決定して、H-経路プトトンポンプ機構を提案した。この酸素還元とプロトン能動輸送の同期の仕組みの解明を目指している。 heme a3とCuBで構成されている酸素還元中心で行われる酸素還元は6種の反応中間体、R, A, P, F, O, Eを経て段階的に進行する。プロトン能動輸送経路であるH-経路は水チャネルとそれに続く水素結合ネットワークとプロトンプールで構成されている。我々は、R状態で水チャネルが開いて4プロトンがN側(マトリックス側)からプロトンプールに蓄積されると主張している。その後、P以降の過程で電子がCuA、heme aをへてheme a3に4回供給される度に1プロトンずつプロトンプールから水素結合ネットワークを介してP側(膜間腔側)に輸送される。R状態(還元型)でのみヘリックスXの構造が水チャネルを開いた状態にする。このヘリックスXの構造に影響を与えているのはheme a3の構造と考えている。幾つかの構造解析を進めている中で2018年度は、P,F中間体の構造決定を完了した。P,F中間体の構造決定では、これまで見過ごされていた多型構造を精密に解析して水チャネルの開閉に関わるヘリックスXの構造に対する異論を退けることができた。これらは投稿準備中である。 O中間体及びその他の類似中間体の回折データ処理も順調に進んでいる。
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