研究課題/領域番号 |
18K06301
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
星野 敦 基礎生物学研究所, 多様性生物学研究室, 助教 (80312205)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / トランスポゾン / アサガオ / ヒストン / DNAメチル化 / 花 |
研究実績の概要 |
アサガオの主要な突然変異原であるTpn1ファミリーのトランスポゾンが関わるエピ変異と花色遺伝子の抑制機構の解明を試みている。 野生型で340コピーあるTpn1ファミリーのトランスポゾンはその殆どが非自律性トランスポゾンであり、転移酵素をコードするTpnA2により転移が制御されていることが示唆されている。そこでまず、転移酵素遺伝子を発現するTpnA2について解析した。すでにトランスポゾンが不活性な野生型と、活性かつトランスポゾンが誘発したエピ変異により花に模様をもつ刷毛目絞変異体について、次世代シーケンサーで調べた結果をもとにTpnA2の内部配列のDNAメチル化を比較検討した。その結果、野生型でも変異体でも内部配列が高度にDNAメチル化されているが、転移酵素遺伝子のプロモーター配列では、野生型の方がよりDNAメチル化レベルが高いことを確認した。つづいて、全ゲノムレベルのヒストン修飾情報について比較検討したところ、変異型でのみ転移酵素遺伝子のプロモーター領域にアセチル化ヒストンが観察できた。以上の結果から、TpnA2にコードされた転移酵素遺伝子は、野生型ではDNAメチル化により発現抑制されていることと、刷毛目絞変異体ではヒストンのアセチル化を伴うDNAの脱メチル化により発現抑制が解除されていることが示唆された。 一方、刷毛目絞に関わる花色遺伝子の抑制機構を調べるために、抑制的なヒストン修飾に関わる遺伝子をゲノム編集で破壊する準備を行った。刷毛目絞変異体を形質転換するための培養条件を検討し、ゲノム編集用のバイナリーベクターの作成に着手した。また、花色遺伝子のプロモーター配列と転写因子の相互作用とエピ変異の関連をクロマチン免疫沈降法で調べるために必要な、タグ付き転写因子を発現するバイナリーベクターを作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アサガオのトランスポゾンによるエピ変異の制御を知る上で重要な、TpnA2の転移酵素遺伝子の発現抑制について知見が得られた。また、花色遺伝子の抑制機構の解析も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
トランスポゾンについては、TpnA2の転移酵素遺伝子の発現をRT-qPCRなどにより調べ、近傍配列のDNAメチル化とヒストン修飾も次世代シーケンサーの結果を情報解析することで調べる。花色遺伝子の抑制機構については、バイナリーベクターを完成させてアサガオを形質転換して変異体を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)トランスポゾンのDNAメチル化とヒストン修飾について調べるため、試薬類の購入を必要としない次世代シーケンサーの配列情報解析に注力したため。
(使用計画)情報解析の結果をもとにRT-qPCRなどの解析が必要になっており、そのための試薬類などを購入して研究を進める予定である。
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