本研究成果は,貝形虫類という微小甲殻類をモデルとして,二枚殻節足動物が如何にして“物を噛む”という基本的動作を達成しているかを明らかにした.本分類群の大顎と形態的に酷似した化石が,後期カンブリア紀の地層から産出している事実は,初期カンブリア紀に出現したとされる節足動物の大顎類は,後期カンブリア紀までに現生種と比肩するレベルの大顎咀嚼系を構築していたことを示す.我々脊椎動物の祖先がカンブリア紀に出現し,デボン紀に顎を獲得するまで3億年近い年月を要した事実と対比すると,節足動物に生じた「大顎革命」は,まさに異例と言える進化的イベントであることが,本研究成果によって明確に浮き彫りとなった.
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