個体数が減少しつつある四国山地に生息するカモシカについて,糞DNAに着目し約10年間の遺伝的多様性の変化を解析した。9つのマイクロサテライト遺伝子座の解析の結果,個体数が減少し始めた2010年以降,アリル数,アレリックリッチネス,ヘテロ接合の観測値が徐々に低下していた。また,2020年は2010年に比べて,ヘテロ接合の観測値が有意に低下していた。近交係数は,2010年に負の値を示していたが2010年以降,正の値を示しホモ接合体の過剰を示した。これらの結果より,カモシカの個体数減少に伴い,遺伝的多様性の低下や近親交配が徐々に高まりつつ状況にあることが推測された。
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