研究課題/領域番号 |
18K06435
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
見坂 武彦 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (80397661)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 渡り鳥 / コリスチン / 耐性菌 |
研究実績の概要 |
種々の抗生物質耐性菌および耐性遺伝子が渡り鳥の腸内に濃縮され、渡り鳥とともに越境移動し、その生息環境に拡散していることが示唆されている。本研究では、次世代シーケンサーを用いたメタゲノム手法と培養法を併用して、渡り鳥の糞に含まれる耐性菌の群集構造の経時的変化を調査する。同時に糞内容物についてメタバーコーディングを行うことで食性の経時的変化を調べ、日本滞在中の耐性菌群集構造と食性との関連を解析する。令和元年度は、冬季に大阪府北部に飛来したカモ科、夏季に北海道で繁殖し冬季に本州以南に飛来するカモメ科の渡り鳥を主な対象として、糞に含まれる細菌群集を解析した。以下の知見が得られた。 1) ヒドリガモ ヒドリガモの腸内細菌の16S rRNA遺伝子のV4領域をPCR法で増幅し、次世代シーケンサーを用いて、網羅的に解析した。その結果、日本に飛来した12月から3月の間に、Pseudomonas属が減少し、Bacteroides属が増加した。また12月から3月の間に、コリスチン耐性の大腸菌群およびコリスチン耐性遺伝子mcr-1が経時的に減少した。これらのことよりコリスチン耐性菌が長距離移動していることが示唆された。 2) カモメ カモメの腸内細菌の16S rRNA遺伝子のV4領域およびエサとなる真核生物のCOI遺伝子をPCR法で増幅し、次世代シーケンサーを用いて、網羅的に解析した。その結果、細菌群集はPsychrobacter属、Escherichia 属、属名不明のEnterobacteriaceaeが多く、抱卵期と育雛期で違いが見られた。育雛期では半数以上の試料でコリスチン耐性大腸菌が10,000 CFU/g以上存在していたが、抱卵期では耐性菌が少ないことがわかった。また育雛期でmcr-1遺伝子がの陽性率が高かった。分離したコリスチン耐性大腸菌のプラスミドが近縁の他の細菌に伝播することがわかった。餌はウトウ、甲虫、ハエなどが多く、抱卵期と育雛期の違いよりも年度の違いが大きかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、①コリスチン耐性菌の現存量の時期の違い、遺伝子型について知見を得ることができた。②餌の解析を行い、同種の鳥の個体間の違い、年度での違いについて知見を得ることができた。③細菌群集構造の同種の鳥の個体間の違い、年度での違いについて知見を得ることができた。④カモメから分離したコリスチン耐性大腸菌の接合伝達能を確認することができた。令和2年度以降の研究計画につながるノウハウを蓄積することができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に行ったフィールドでの結果をもとに、飛来する渡り鳥の腸内細菌の年度毎の違いや、地域間での違いについて研究を進める。カモ科、カモメ科を主な対象として糞を採取し、以下の検討を行う。①抗生物質耐性菌の現存量、種類、遺伝子型を解析する。②餌のミトコンドリアDNAのCOI遺伝子、葉緑体DNAのrbcL遺伝子を標的として、次世代シーケンサーを用いて、餌の種類の網羅的同定を行う。③糞に含まれる細菌群集の網羅的を行う。④①で得られた特徴的な耐性菌について、接合伝達実験を行い、他の細菌への耐性遺伝子の伝達頻度を検討する。⑤得られたデータをもとに、渡り鳥の飛来にともなう細菌の移動量、細菌の属種について、鳥の種間での違い、同種の鳥の個体間での違い、同種の鳥の年度毎・地域間での違いについて検証する。GPSや足環を用いた鳥の種類と飛行ルートなどの既知データと照合して、上記の研究結果を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究費を利用して効率的に研究を進めることができたため、次年度使用額が生じた。
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