超並列DNAシーケンサーを用いたメタゲノム手法と培養法を併用して、渡り鳥の糞に含まれるコリスチン耐性菌、一般細菌群集組成、食性の経時的変化を調べ、日本滞在中の耐性菌群集構造と食性との関連を解析した。冬季に大阪府北部に飛来したカモ科、夏季に北海道で繁殖し冬季に本州以南に飛来するカモメ科の渡り鳥を主な対象として、以下の知見が得られた。 1) ヒドリガモ:腸内細菌の16S rRNA遺伝子のV4領域をPCR法で増幅し、超並列DNAシーケンサーを用いて網羅的に解析した。その結果、日本に飛来した12月から3月の間に、Pseudomonas属が減少し、Bacteroides属が増加した。コリスチン耐性の大腸菌群およびコリスチン耐性遺伝子mcr-1が経時的に減少した。餌を調べるために真核生物のrbcL遺伝子をPCR法で増幅し、超並列DNAシーケンサーを用いて網羅的に解析した。食した植物と耐性菌数、細菌群集との相関性を分析したところ、特定の植物の摂取と耐性菌数が負の相関を示した。特定の植物にコリスチン耐性大腸菌を減少させる因子がある可能性があることが示唆された。 2) カモメ:腸内細菌の16S rRNA遺伝子のV4領域およびエサとなる真核生物のCOI遺伝子をPCR法で増幅し、超並列DNAシーケンサーを用いて網羅的に解析した。その結果、細菌群集はPsychrobacter属、Escherichia 属、属名不明のEnterobacteriaceaeが多く、抱卵期と育雛期で違いが見られた。抱卵期ではコリスチン耐性大腸菌が少なく、育雛期で増加する傾向があった。また育雛期でmcr-1の陽性率が高かった。分離したコリスチン耐性大腸菌のプラスミドが近縁の他の細菌に伝播することがわかった。餌は甲虫、ハエなどが耐性菌数と相関し、特定の餌にコリスチン耐性大腸菌を増加させる因子がある可能性があることが示唆された。
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