研究実績の概要 |
骨は、骨が溶かされ壊れること(骨吸収)と骨が新たに作られること(骨形成)を絶えず繰り返している。正常な状態では骨吸収と骨形成のバランスは保たれているが、骨粗鬆症患者では骨吸収の方が優位になっているので、骨の量が次第に低下する。骨吸収を担うのは破骨細胞なので、その細胞の形成を阻害し、骨吸収を抑制することができる化合物は骨粗鬆症治療薬の候補化合物となる。一方、破骨細胞が形成されるためには、破骨細胞の(1)分化と(2)細胞融合の2つの段階を踏む必要がある。したがって、(1)と(2)のどちらかの段階を阻害することができれば、破骨細胞による骨吸収を阻害することができる。当研究室では、独自の薬用資源(約4,500種)を保有しており、それらの資源から、破骨細胞による骨吸収を阻害する化合物を探索している。 本研究では、2018、2019年度に破骨細胞の分化あるいは細胞融合を阻害する化合物を探索し、5つの阻害物質(新規ジブロモインドールアルカロイド(A)、ダバノン類縁体(B)、テルペノイドtaichunins(C)、麦角アルカロイド、および、カテキン類縁体)を発見していた。 2020年度は、A、B、Cについて、構造解析と活性評価を行った。 Aは海綿から得た新規化合物であり、破骨細胞の分化は阻害せず、細胞融合を阻害することから、骨粗鬆症の治療薬の候補として期待できる。そこで、Aの誘導体を化学合成により12種以上すでに取得し、現在、構造活性相関を調べている。Bについては、複数の新規化合物が得られ、そのうちの1つは数nMで分化阻害活性を示した。また、Cについても10種以上の新規化合物が得られたので、構造活性相関を調べた。そのうちの1つについて、収量が最も多いことからmRNAレベルで活性機序を調べ、転写因子NFATc1の発現を阻害することで分化阻害を示すことが分かった。
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