研究課題/領域番号 |
18K06734
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木内 文之 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (60161402)
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研究分担者 |
植草 義徳 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 助教 (30753024)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フラボノイド / ポリメトキシフラボン / NO産生抑制 / リン脂質膜親和性 |
研究実績の概要 |
オウゴンのフラボノイドと類似構造を有するB環に置換基を持たないフラボノイド類を化学合成し、培養細胞(J774.1細胞)を用いた一酸化窒素(NO)産生抑制作用を検討した。A環に酸素置換基を一つ有するメトキシフラボン類は、ヒドロキシフラボンのメチル化あるいは2,3-dimethoxybenzonitrileを出発原料とした7ステップの反応により得た。酸素置換基を二つあるいは三つ有するメトキシフラボン類は、chrysinあるいはbaicaleinのメチル化およびエルブス過硫酸酸化により合成した。市販品をあわせた計22種のフラボン類について、リポ多糖誘導性NO産生抑制活性を評価し構造活性相関を解析したところ、①メトキシ基を一つ以上有するフラボン類、②6位にメトキシ基を有するフラボン類、③5位にヒドロキシ基および7位にメトキシ基を有するフラボン類には高い活性を示す傾向が認められた。さらに、A環に酸素置換基を一つ有するフラボン類の細胞膜に対する親和性についてリン脂質カラムを用いたHPLC分析により数値化したところ、リン脂質膜親和性とNO産生抑制活性強度との間に正の相関が認められた。以上の結果から、A環に酸素置換基を一つ有するフラボン類は、細胞内において同じ作用点に作用するのに対し、酸素置換基を多数有するフラボン類は、異なる様々な段階において抗炎症作用に関連するNO産生シグナル伝達経路を阻害することが考えられた。 チンピの抽出物計21種類についてNO産生抑制作用を評価した結果、抽出物ごとに活性強度が大きく異なっていた。更に、HPLCによる成分分析を組み合わせたケモメトリクス解析の結果、ポリメトキシフラボン類の含量割合が活性強度に強く関与していることが明らかとなった。また、ポリメトキシフラボン類以外の化合物(フラバノン配糖体)も重要な役割を担っている可能性が考えられ、これら化合物群が相加・相乗的に作用していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記載したように、様々なフラボノイド類を化学合成により取得できたことから、NO産生抑制活性に関する構造活性相関が徐々に明らかとなっており、得られた知見を基にしてさらに高い活性を有する化合物の創出を現在進めている。また一部のフラボノイド類については、細胞膜親和性とNO産生抑制活性との間に相関性が認められたことから、生物活性発現初期段階における作用メカニズムの一端を明らかにすることができた。さらに、各フラボノイド類がNO産生に関与するシグナル伝達経路に対しどのように影響にしているかを明らかにするため、各段階における関連タンパク質発現レベルを解析する準備・検討を行っている。チンピ抽出物に含まれるNO産生抑制作用を担う化合物はポリメトキシフラボン類だけでなく、他の化合物の関与も示唆されたことから、相加・相乗効果の発現メカニズムの解明に向けて、これら化合物の単離・構造決定を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で取得した知見を基にしてフラボノイド骨格にメチル基やメトキシ基を新たに導入することで、さらに高い活性を有するフラボノイド類縁体の創出を進め、細胞評価系を用いてPG並びにNO産生シグナル伝達経路に対する作用点を個々の化合物について明らかにする。特に、単一の化合物がiNOSや関連するリン酸化酵素および転写因子の発現量などシグナル伝達経路上の複数の段階を標的としている可能性も考えられることから、関連する分子全体を網羅的に解析していく。また、異なる作用点(作用メカニズム)を有する化合物を組み合わせた際のPG並びにNO産生抑制作用の増強を定量的に解析し、相乗効果を生み出す因子を解析する。
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