研究課題
シナプスは脳の情報伝達機構の基盤であり、樹状突起スパインの大きさやシナプス面積の活動依存的変化が、学習・記憶などの高次脳機能を支える細胞レベルの実体であると考えられている。脳の高次機能には興奮性シナプスの構造的可塑性を伴う機能調節機構が深く関与し、近年、この可塑性制御に脳由来神経栄養因子(BDNF)-TrkBシグナル伝達経路とPI3K-膜脂質(特にホスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸)PIP3が重要な役割を担うことが報告された。しかし、PIP3の相互作用分子を含め下流のシグ ナル伝達路は不明である。我々は、PIP3に高い結合親和性を持つPhldb2 (pleckstrin homology-like domain、family B、member2)の機能解析の過程で、Phldb2が長期増強 (LTP) および長期抑制 (LTD) 両方にシナプス可塑性の発現に必須かつ、スパインの形態変化に関与することを発見した。さらに、Phldb2はF-actin関連因子であるdrebrin Aの発現および局在を制御し、スパインの形態変化、成熟に関与すると見られた。今年度はPhldb2 KOマウスでは、培養海馬神細胞においてスパインでのF-actin局在を検討し、Phldb2 KOマウスのスパインheadでのF-actin発現が低いことを見出した。また、電子顕微鏡レベルの高感度で集束イオンビーム(FIBSEM)/三次元構造の再構築法を用い、PSD領域およびスパインの大きさの変化を検討したが、Phldb2 KOマウスでは異常が見られなかった。さらに、PSD領域およびスパイン頸部のF-actin局在を検討中である。
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J. Neurosci.
巻: Online ahead of print ページ: JN-RM-0367-20
10.1523/JNEUROSCI.0367-20.2021.