造血微小環境は、線維芽細胞、マクロファージ等の細胞からなる造血幹細胞をとりまく様に存在する「ストローマ細胞」と総称される間質系細胞より構成され、造血幹細胞の増殖・分化を制御している。本研究は造血微小環境の構成要素としてのストローマ細胞に注目し、これら細胞がどの様に造血幹細胞の増殖・分化に関わりを持って機能しているかをin vivo検体標本を用いて解析し、さらに三次元培養法を用いたin vitro実験の両面から検証を行った。 令和2年度も引き続き、造血系の増殖、分化に異常を有する老化促進モデルマウス(senescence-accelerated mice:SAM)と正常マウスとの比較検討により、外的ストレス(LPS投与)時の骨髄、脾臓造血組織ストローマ細胞、特にマクロファージの亜群の存在様式を経時的に観察し、造血制御機能の解析を行った。この結果SAMマウスではストローマ細胞を介した生体の恒常性維持機能の破綻が造血器障害の一因となっていること、また機能的マクロファージへの分化異常がその破綻の一因であることを明らかとした。さらにストローマ細胞による造血制御機構について、三次元培養を用いたin vitroでの造血細胞との共培養法システムにより検討した。特性の異なる骨髄由来ストローマ細胞を分離し、それぞれ固有の三次元培養法を構築し、造血細胞との共培養系を用いて比較検討した。その結果、造血幹細胞は存在する個々のストローマ細胞特異的に細胞周期の制御を受けながら増殖・分化の制御を受けている結果が得られた。ストローマ細胞は恒常的造血、またストレス下の反応性造血において、サイトカイン産生などの機序を介して造血細胞の増殖、分化を制御し、同時に細胞周期のバランスを制御することにより造血細胞保護機能を有することにより、造血現象の中心的役割を担い、造血制御の主役として機能していることが明らかとなった。
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