研究課題/領域番号 |
18K07095
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
平井 誠 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50326849)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | マラリア原虫 / ミューテーター |
研究実績の概要 |
ヒトに感染するマラリアは、病原体であるマラリア原虫をハマダラカ属の蚊が媒介することでおこる感染症である。マラリア原虫とハマダラカは進化の過程で寄生体・宿主という関係を構築したが、これを決定している分子基盤はまったく不明である。本研究は、通常の約80倍の進化速度をもつネズミマラリア原虫(ミューテーター)を駆使し、これを非好適宿主蚊(ハマダラカ属以外の蚊)に繰り返し感染させることで、非宿主蚊への感染能を獲得したマラリア原虫変異体を単離する。単離した変異体の全ゲノム変異解析およびトランスクリプトーム解析を行ない、宿主適応度を規定するマラリア原虫側因子を同定する。一方、ミューテーター感染を許容した非好適宿主蚊のトランスクリプトーム解析を行なうことで、非寄生体を許容し得る宿主側因子を同定する。この研究により寄生体・宿主成立の分子基盤を明らかにし、これの破綻を狙った「蚊によるマラリア伝播阻止法の開発」を目指す。 本年度では、非媒介蚊に対して高い寄生能を獲得した変異体原虫の単離を試みるため、オオクロヤブカにミューテーターを単離する実験を行うため、オオクロヤブカ飼育のためのシステム構築を確立した。さらにミューテーターをオオクロヤブカへ取り込ませるための人工膜吸血法の実験系を確立した。また、吸血前後において消化管と唾液腺を単離し、トランスクリプトーム解析を行うための予備実験を行い、これら2つの器官を他の組織が混在することなく単離し、そこからmRNAの単離が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の予備実験完了を踏まえ、非媒介蚊であるオオクロヤブカを用いた本実験を行ったが、感染性が低く、継代感染を行うことが困難である見通しを得たため。
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今後の研究の推進方策 |
非媒介蚊を用いた感染実験は一時中断し、媒介蚊を用いた実験にフォーカスする。媒介蚊がマラリア原虫に感染した際の変化を、蚊の消化管と唾液腺にフォーカスしてトランスクリプトーム解析により調査する。一方、原虫側の遺伝子発現変化も同時に調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
非媒介蚊を用いて本実験を行ったが、感染性が低くデータを取ることが困難であった。これらの費用は、本研究課題のもう一つの柱である媒介蚊を用いた実験に使用することが合理的であることから、次年度にこれらの実験をおこなうことにしたため。
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