研究実績の概要 |
ユーイング肉腫は小児の骨及び軟部組織に発生する腫瘍であり、染色体の相互転座による転写活性化部位を持つRNA結合遺伝子EWSR1とDNA結合部位を持つ転写因子FLI1、ERG、E1AFの組合せ(EWS-FLI1、EWS-ERG、EWS-E1AF)によって引き起こされる。しかし、これらのキメラがん転写因子が、がん化を引き起こす分子メカニズムは未だに不明である。研究代表者はユーイング肉腫のがん遺伝子であるキメラがん転写因子を標的とした分子標的治療の基礎的知見のため、3種類のキメラがん転写因子と結合するタンパク質をBioID法で同定することを目的とした。 ユーイング肉腫細胞にBioIDタグをつけたEWS-FLI1、EWS-ERG、EWS-E1AFをPiggybac systemで導入し、tet-onで一過的に発現誘導できる系を構築した。その結果、ユーイング肉腫キメラがん転写因子3種類で特異的に同定された候補タンパク質を前年度までに164種類同定した。同定されたタンパク質にはBRG1などのクロマチンリモデリング複合体、スーパーエンハンサー形成に必要な複合体、転写因子、RNA結合タンパク質など多数が含まれた。BRG1などのクロマチンリモデリング複合体はすでに相互作用することが報告されており、既知の複合体も同定することができ、作製した系が正常に動いていることが確かめられた。本年度は同定されたタンパク質をStreptavidin agaroseで精製した精製物に含まれるかどうかの再現性を確認する実験を主に行った。c-Jun, Jun-B, Jun-D, FosL2, CPSF6, CPSF7, RBM33, TLE3は抗体で検出したところ再現性があることが分かった。一方、CREB5, FosL1, Asf1, PIAS4, SUMO2/3, RBM12, RBM26, BCL11B, TCERGはコントロールと比較して再現性を得ることができなかった。現在レンチウイルスshRNAによるノックダウンを行い、ユーイング肉腫細胞での表現型を解析している。
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