研究課題/領域番号 |
18K07260
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
浜名 洋 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (90551549)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | TCR / 機能解析 / Luciferase assay / Jurkat / TAP |
研究実績の概要 |
本研究では、がん抗原WT1陽性腫瘍に浸潤したT細胞からWT1反応性のTCR遺伝子を取得することを目的に研究を進めている。 2019年度は、WT1特異的TCRをスクリーニングするための新たなTCR機能解析系の開発を行った。当初の予定では293T-Luc細胞とTCRのIVT mRNAを用いてWT1特異的TCRのスクリーニングを進める予定であったが、293T-Luc細胞にはTCRの発現に必要な多数の遺伝子を導入しており、細胞の継代とともに導入した遺伝子の発現低下がおこり、TCRの抗原反応性の低下が問題となっていた。そこで、2019年度はT細胞由来の細胞株であるJurkat細胞を用いた新たなTCR機能解析系の構築を行った。CRISPR-Cas9システムを用いてJurkatが内在的に発現しているTCR遺伝子をノックアウトし、ヒトCD8α遺伝子を導入した細胞 Jurkat Δαβ hCD8αを作製した。そして、この細胞を用いてTCRの抗原特異性が解析できるかを、NY-ESO-1特異的な1G4 TCR、およびWT1特異的なTAK-1 TCRを用いて検証した。また、当初の予定ではIVT mRNAをTCRの発現に用いる計画であったが、2019年度はTAP (Transcriptionally active PCR) fragmentを用いる方法も検討した。 その結果、(1)エレクトロポレーションによるJurkat Δαβ hCD8αへの遺伝子導入条件の検討をGFP発現ベクターを用いておこない、70~80%の細胞でGFP陽性となる条件を決定し、(2)エレクトロポレーションにより、1G4 TCRおよびTAK-1 TCRのTAP fragmentをJurkat Δαβ hCD8α遺伝子導入し、特異的ペプチド抗原による刺激でLuciferase assay出来ることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、(1)TCRの機能解析をJurkat Δαβ hCD8αとTAP fragmentを用いたTCR機能解析系に変更したことによる研究の遅延が生じている。また、(2)新しい解析系の能力を評価するため、COS7-WT1-A24(Ub-WT1-ODC cDNAとHLA-A*24:02 cDNAを遺伝子導入)を抗原提示細胞(APC)として、HLA-A*24:02拘束性WT1ペプチド反応性のTAK-1 TCRを発現させたJurkat Δαβ hCD8αを刺激してTCRの反応性が解析できるかどうか検討したが、TCRの反応は検出できなかった。一方、COS7-NYESO1-A24(Ub-NYESO1-ODC cDNAとHLA-A*02:01 cDNAを遺伝子導入)をAPCに用いた場合は、HLA-A*02:01拘束性NY-ESO-1ペプチド反応性の1G4 TCRを発現させたJurkat Δαβ hCD8αにおいて1G4 TCRの活性化が検出された。これらの結果から、WT1のcDNAを用いたWT特異的TCR遺伝子の取得は困難な状況となっている。上記の(1)、(2)の理由により「遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果より、WT1を標的抗原に研究を推進するのは難しいことが予想される。そこで、今後は、NY-ESO-1やネオアンチゲンなどの腫瘍抗原を標的として研究を進めていく。現在、大腸がん患者腫瘍のネオアンチゲン解析を進めており、これまでの研究で構築したJurkat Δαβ hCD8αとTAP fragmentを用いたTCR機能解析系を用いてネオアンチゲン特異的TCR遺伝子の取得を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が遅れており、本年度TCRの機能解析に用いる試薬の購入が見合わせとなり、次年度使用額が生じた。繰り越した研究費については、2020年度に、標的抗原をネオアンチゲンに変更してTCR遺伝子の取得を進める予定であり、その実験に使用する試薬の購入に使用する計画である。
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