がん分子標的治療ではATP競合型キナーゼ阻害剤の躍進が著しいが、それに続く画期的な創薬のためには新たな治療標的の同定が重要な課題である。本研究開始時に、我々が同定したWnt/β-cateninシグナル阻害剤(WSI)が、mTOR複合体(mTORC)構成因子の1つであるTel2に結合することを見出していた。Tel2はmTORCの安定化因子であり、その機能制御は新たな治療戦略になり得ると考えた。本研究では「WSIのTel2への結合が、mTORC機能を阻害し、Wnt/β-cateninシグナル依存性細胞増殖を抑制する。」という作業仮説の検証を行い、新規治療標的としてのTel2の有用性を明らかにした。
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