研究実績の概要 |
申請者らは、DiR(近赤外線吸収色素)、ミグリオール(油)やサーファクタント(界面活性剤)にCOX2阻害薬であるセレコキシブ(CXB)を封入したO/W型大きさ200 nm以下のナノエマルション(CXB/NE)を開発した。開発したCXB/NEはマウスマクロファージ様細胞RAW264.7細胞に対し細胞毒性は認められず、マウスマクロファージ様細胞のCXB/NE取り込み能を、蛍光顕微鏡を用い二重染色にて確認したところ、CXB/NEがマウスマクロファージ様細胞に取り込まれていることを明らかにした。CXB/NEは近赤外線吸収色素をイメージプローブとしているので、近赤外線分析計を用い、CXB/NEの生体内局在を画像化し確認することができる。そこで申請者らは、近赤外線蛍光ラベル化したCXB/NEをC57BL/6マウス静脈内へ投与12時間後、完全フロイトアジュバンド(CFA)をマウス足跡内に投与したところ、マクロファージに取り込まれたCXB/NEが炎症した足跡部位に集積していることを蛍光免疫染色と近赤外線分析計により明らかにし、またCFA誘発性アロディニアを持続的に抑制することを明らかにした(Theranostics.10(4):1694-1707,2020)。 そこで本研究では、ガン性疼痛とガン増殖に関与しているCOX2を特異的に阻害するCXBを封入したナノエマルジョン(CXB/NE)がマクロファージに取り込まれ、ガン細胞により障害を受けた神経細胞周辺やガン組織に特異的かつ効率的に送達し、ガン性疼痛とガン増殖を共に抑制する可能性を調査した。雄性のC57BL/6系マウスの後肢足蹠に、B16-F10メラノーマ細胞を移植して作成したガン性疼痛モデルにCXB/NEを静脈内へ投与したところ、コントロール群に比べガン細胞誘発性のアロディニアは有意に抑制され、腫瘍サイズも小さくガン増殖抑制効果を示した。
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