研究課題
細胞膜上にはlipid raftsというシグナル伝達分子や糖脂質が局在するマイクロドメインが存在する。我々は、軸索障害型ギラン・バレー症候群患者血清中に認められる抗GM1抗体が、神経細胞の生存・分化に必須の神経成長因子(NGF)の高親和性受容体であるTrkを介するシグナル伝達系を傷害し、その傷害が通常lipid rafts上に存在しているTrkが非rafts画分へ移動させられてしまうことによることを報告した(A. Ueda et al. Mol Cell Neurosci. 2010)。中性スフィンゴミエリナーゼはlipid raftsの重要な構成分子であるスフィンゴミエリン(SM)を分解し、ガングリオシド(Gg)や中性糖脂質抗体の基質となるセラミド(Cer)を産生する。抗中性糖脂質抗体による、nSMase分子の局在と活性の変化、lipid raftsを含めた細胞膜の構造への影響、エキソソームの変化などを明らかにする事を通じて神経疾患の病態を脂質の側面から解明することを目的とした。PC12細胞にTrkを高発現させた神経系培養細胞に抗GM1抗体を作用させると、①細胞膜画分のnSMase蛋白量と活性が減少したが酸性SMase活性には影響を及ぼさなかった。②その結果、細胞膜画分でSMが増加したが、分解産物であるCer量には変化は与えなかった。細胞膜Gg量にも影響しなかった。③全細胞ではSMにもGgにも影響を与えなかった。④lipid raft画分ではnSMase活性が有意に低下していたこれらの結果は、細胞膜上のGM1など分子に対する抗体により、神経系培養細胞の細胞膜やlipid raftsの蛋白質や脂質の組成が変化し得ることを示している。抗体や薬剤など各種方法で細胞膜上やlipid raftsの脂質成分を変化させることで、疾患の標的分子を減少させうる可能性もあると考えられた。
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