2023年度は、最終年度であった。研究期間全体を通しては、大学入学時の人格特性の評価としてTemperament and Character Inventory (TCI)、大学保健センターを受診時に抑うつ症状の評価としてPatient Health Questionnaire (PHQ-9)、社交不安症状の評価としてLiebowitz Social Anxiety Scale(LSAS)、肯定的および否定的なライフイベントの評価としてLife Experience Survey(LES)、自尊心・自己効力感の評価としてRosenberg’s Self-Esteem Scale(RSES)、絶望感の評価としてBeck Hopelessness Scale(BHS)を施行し、大学生年代の青年期の抑うつ症状と社交不安症状に関する包括的、縦断的検討を行った。 社交不安症状と自尊心・自己効力感は、自殺関連念慮の有意な予測因子であることが確認された。また、社交不安症状と自尊心・自己効力感が自殺関連念慮に及ぼす影響は、絶望感によって部分的に媒介されていることが確認された。6ヶ月以内の否定的なライフイベントは、うつ病群で健常群と比較し優位に高かった。社交不安症状は、人格特性としての損害回避傾向、6ヶ月以内の肯定的ライフイベントと関連し、抑うつ症状は、人格特性としての損害回避傾向、肯定的なライフイベント、否定的ライフイベントと関連した。さらに、今後の治療的介入法の検討を考慮し、社交不安に対する薬物療法および自尊心・自己効力感に関する介入が自殺関連念慮を減少させるかについてのシステマティックレビューとメタ解析を行なった。 最終年度は、COVID-19パンデミック期間において、低い自尊心・自己効力感、絶望感、心理的苦痛が自殺関連念慮を高めることを報告し、国際的に社交不安症の診療ガイドラインを発表した。
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