研究課題/領域番号 |
18K07671
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大宝 和博 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20452146)
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研究分担者 |
加茂前 健 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60706282)
伊藤 善之 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院教授 (90232488)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 定位放射線照射 / 脳血管奇形 / 脳動静脈奇形 / 低侵襲治療 / 高精度放射線治療 / 脳卒中 |
研究実績の概要 |
ロボット式照射システムを用いた標的線量分布の最適化と照射時間短縮による負担軽減の検討を進めた。硬膜動静脈瘻に比べ脳動静脈奇形は1)異常血管存在範囲内において機能を有する正常神経組織や時相的に最終段階の閉塞が望ましい主要導出静脈系など線量軽減すべき成分、2)可及的早期に閉塞すべき異常血管主体の線量増加すべき成分の2者の混在が多い。新規最適化アルゴリズムと可変式準円形コリメータの径の異なる複数の組み合わせにより、標的体積境界を単に処方辺縁線量で原体性をもって囲むだけでなく、これら内部の構成要素を考慮し、内部の線量勾配の最適化(dose painting/sculpting)が可能となり、また固定径コリメータに比べ有意に照射時間の短縮が可能であることを明らかにした。また、フレームレス治療精度担保(照射中の頭部の位置誤差の検出・補正)の点では、種々の画像誘導システムのなかでも照射途中の頭部の動きの検出補正頻度の多さからロボット式システムの照合システムが最も優れ、また従来標準の局所麻酔下フレーム固定と精度面で同等以上、負担侵襲面では有意に優れることを明らかにした。また、選択的経動脈的回転血管造影の再構成断層画像を含む複合画像統合による治療シミュレーション体系を構築した。これにより血管構築や周囲組織との三次元的関係の詳細な可視化が可能となり、定位照射のみならず、血管内治療、摘出術の効果予測、リスク推定、適応判断が可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線量分布の最適化について、定位照射に特化したロボット制御照射システムを中心に検討を進めた。従来の最適化アルゴリズム(Sequential optimization)と新規最適化アルゴリズム(VOLO)を比較検討した結果、後者により標的内線量の部分的軽減(dose sculpting)が可能であることを明らかにした。また、初年度に明らかにした最適なコリメータである可変式準円形について径の異なる複数を組み合わせることにより、標的辺縁内外、内部の線量勾配の調整が可能となり、標的内部の一部の線量を有意に増加するdose paintingが可能であることを明らかにした。本知見は血管奇形のみならず腫瘍性病変へも適用可能であることを確認した。また、新規アルゴリズムと可変式コリメータの組み合わせは従来法よりも照射時間を有意に短縮することを明らかにした(低侵襲化)。また、画像誘導システムに関し、ロボット照射システム、汎用高精度対応リニアックのシステム(in-room, built-in)を比較検討した結果、ロボット式システムの照合システムが照射途中の頭部の動きの検出補正頻度の多さから最も優れることを明らかにした。また臨床例での検討解析から従来の局所麻酔下フレーム固定と精度面で同等以上、負担侵襲面では有意に優れることを明らかにした。また、選択的経動脈的回転血管造影の再構成断層画像を含む複合画像統合による治療シミュレーション体系を構築した。血管構築の三次元的形状、導入、導出血管と異常血管塊の関係、周囲正常組織との関係などの詳細な把握が可能となり、定位照射のみならず外科手術、血管内治療含めた複合的治療方針決定にも有用であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の検討・解析の結果、定義された標的体積、隣接するリスク臓器に対し線量分布を最適化する手法、フレームレスでの頭部固定での高い治療精度担保、照射時間短縮による負担軽減等、精度向上と低侵襲化の面で従来法より負担軽減をはかりつつ治療成績向上が期待できる成果が得られた。最終年度の課題は、残る最重要課題のひとつである動脈から静脈への血流の早い病的シャントを本態とする血管奇形の三次元的病変形状を、時間分解能をもった4次元画像解析に基づきより詳細かつ精度の高い血管構築把握による標的体積決定法の確立である。導入動脈よりの異常奇形血管成分とともに最も重要な標的成分とみなされる最終的に主要導出静脈へ流出する手前の異常奇形血管成分を可視化し区別するため、通常の診断で施行される直交2方向あるいは斜位での選択的血管造影画像(DSA)を回転血管造影の再構成断層画像あるいは治療計画用非造影CTに高い精度で統合可能か、その手法、画像の歪みの解析、時間分解能の要素、異なる時相をカラー表示で可視化する方法の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィルムでの線量分布検証が可能な液体塞栓物質(NBCA)を一部包含する特注ファントムの購入を引き続き検討してきたが、予算面、内容面(性能)で問題があり購入を断念した。その予算は、時間分解能を有する通常の2方向からの血管造影画像情報を治療計画CTあるいは回転血管造影の再構成断層画像へ高精度に統合(image fusion)するためのソフトウェア導入の経費に充てる予定である。
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