研究課題/領域番号 |
18K07894
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
西條 政幸 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 部長 (50300926)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 単純ヘルペスウイルス / 水痘帯状疱疹ウイルス / アシクロビル / Bウイルス / 薬剤耐性 / 免疫不全 |
研究実績の概要 |
1.国内の医療機関からのヘルペスウイルス感染症における薬剤感受性検査の受け入れを本研究の目標の一つとしている.日本全国の医療機関から単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1),水痘帯状疱疹ウイルス(VZV),ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症における薬剤感受性検査依頼を受け入れた.原因不明の脳炎患者の脳脊髄液中からBウイルス遺伝子が検出され,日本(アジア)で初めてBウイルス感染症患者の診断に貢献した.
2.HSV-1 F株をもとに樹立されたBACシステムを用いて,HSV-1-vTK遺伝子を水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus,VZV)のvTK遺伝子に入れ替えた組換えHSV-1(HSV-1-VZV-vTK)を作出した.また,HSV-1-VZV-vTK のVZV-vTK遺伝子をHSV-1のvTK(HSV-1-vTK)遺伝子に組み替えた組換えウイルス(HSV-1-HSV-1-vTK)も作出した.HSV-1-VZV-vTKおよびHSV-1- HSV-1-vTKのそれぞれの組換えウイルスのクローンを作製し,ACV存在下で培養することによりACV耐性HSV-1-VZV-vTKクローンとHSV-1- HSV-1-vTK耐性クローンを樹立した.それらのACV耐性クローンのDNAポリメラーゼ(DNApol)遺伝子とvTK遺伝子の塩基配列を決定したところ,ACV耐性HSV-1- VZV-vTK耐性クローンの中に,DNApol遺伝子にも,HSV-1-vTK遺伝子にも変異のないACV耐性株が存在することを明らかにした.そのACV耐性ウイルスの全塩基配列を決定し,UL29遺伝子に変異があることが明らかになった.BACシステムを用いてその変異を有するHSV-1を実験的に作出し,真にそれがACV耐性を誘導することを明らかにした.これは新規ACV耐性機序である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的とする研究目標,1)国内の医療機関からのヘルペスウイルス感染症における薬剤感受性試験を受け入れる,2)HSV-1のDNApol遺伝子に特異的にACV耐性遺伝子変異を誘導させるためのシステムを構築する,これらの目標は達成された.さらに新規ACV耐性誘導機序の存在を明らかにした.その機序の詳細な解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
日本国内でACV耐性ヘルペスウイルス感染症の検査が実施されている機関は極めて限られている.日本国内でヘルペスウイルス感染症,特に免疫不全患者における薬剤耐性ヘルペスウイルス感染症についてウイルス学的に検査できる体制を整備することが求められる.そのための基盤研究を継続する. 本研究で明らかになった,HSV-1にACV耐性を誘導する新規機序が,ACV耐性の有無を調べるために送付された臨床検体中にあるかどうかを解析する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は,約37万円の研究費を次年度使用することにしました.これは全国の医療機関からの抗ウイルス薬に対する感受性試験の依頼数が予想よりも少なかったことによります.また,2020年1月からは所属する国立感染症研究所職員としてCOVID-19対策に対応するとともに,研究を実施しづらい状況になったためです. 2020年度は研究計画を調整し,研究目的を達成させる所存です.
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