研究課題
基盤研究(C)
加齢は胃癌発症の要因の1つと考えられる。近年、幹細胞から臓器に類似したモデルを作成できる3次元細胞培養実験系のオルガノイドが確立してきている。これらを踏まえて、加齢マウス由来胃オルガノイドを樹立し、胃発癌機序を解析した。加齢由来胃オルガノイドでは若年由来に比較して、Wnt/beta-catenin細胞内シグナルが活性化し、予想に反し、細胞老化に関わる遺伝子の発現が抑制を受け、細胞周期G2/M期を制御する遺伝子の発現が亢進し、細胞増殖能が高いオルガノイドが出現することが明らかとなった。
消化器内科学
本研究の加齢マウス由来の胃オルガノイドを用いた検討から、胃粘膜組織では、加齢とともに生理的な幹細胞老化から逸脱して、細胞増殖能が高い病的幹細胞(クローン)が出現することが類推でき、加齢に伴って胃癌が発生する極めて初期の病態の一端と考えられた。超高齢社会を迎えている日本において、胃癌に対する分子生物学的診断や治療の必要性について考える上で、本研究は基礎的資料となると思われた。