研究実績の概要 |
腸内細菌叢の変化は腎臓病の病態に関与すること知られている。我々は以前に腸内細菌叢が消失した無菌マウスではアデニン誘発性腎不全の病態がより重症化することを報告しているがその機序は不明であった。この機序を明らかにするため本研究では腸内細菌叢が担う生体内プリン代謝および免疫応答それらの腎障害への影響を検討した。無菌マウスではプリン体代謝酵素であり、アデニンから腎毒性物質2,8-DHAへの変換も担うキサンチンオキシダーゼ(XDH)の発現が上昇していることを見出した。また無菌マウスは通常マウスと比較してプリン体最終代謝物である尿中アラントインの増加に加え糞便中のプリン代謝物に大きな変化が生じていた。以上から、無菌環境による腸内細菌の消失はプリン代謝酵素の発現増加を介してアデニンから腎毒性物質2,8,DHAへの変換を促進し、その結果アデニン腎障害の病態を悪化することを明らかにした。本知見はプリン体代謝制御における腸内細菌の新たな関与機序を明らかにしたものである。 また腸内細菌叢の有無が腎不全病態時の炎症応答における影響を検討した。炎症性サイトカインのアレイ解析を行った結果、腸内細菌叢を生来欠失した無菌マウスでは、炎症性サイトカインの内Th17の腎臓内発現が消失しており、本来腎不全時にみとめるTh17の腎内発現の増加も認めなかった。Th17の発現および誘導には腸内細菌叢刺激が関与することが知られているため、腸内細菌叢の有無が炎症時の全身応答にも影響を与えていることを明らかにした。
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