研究課題/領域番号 |
18K08224
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
市田 公美 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (80183169)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 一塩基多型 / ABCG2 |
研究実績の概要 |
今回、現在までに同意の得られたCKDステージG3aの患者(N=167)を対象に、ABCG2の推定機能と腎機能の低下速度を観測開始時、経時的平均値(台形法により算出)、観測終了時の三点で反復測定分散分析によって解析した。 【方法】ABCG2の推定機能はABCG2遺伝子の変異によって推定した。126番目のグルタミンが終始コドンに変異するQ126Xは尿酸排泄能が消失し、141番目のグルタミンがリジンに変異するQ141Kは尿酸輸送能が半減する。この2つの一塩基多型は同じハプロタイプ上には存在せず独立したリスクと考えられるため、組み合わせによってABCG2の推定機能を100%・75%・50%・25%とした。反復測定分散分析においては進行程度のバイアスを排除するため、観測開始時のCKDステージで階層化し、中程度悪化であるステージG3aで階層化した患者群で解析を行った。 【結果】CKDステージG3a群のCKD患者のABCG2推定機能別の腎機能の低下率において、25%群の腎機能低下率は、他群に比して有意ではないものの低下する傾向が認められた。観測開始時、経時的平均値、観察終了時の3点間における推定糸球体濾過量(eGFR)の経時的な推移から、ABCG2の推定機能別のeGFR低下速度に有意差が認められ(p=0.048)、中程度悪化群ではABCG2の推定機能がeGFRに影響することが判明した。 【考察】腎機能が中等度低下している場合、ABCG2の著しい機能低下があると腎機能低下が速いことが明らかになった。しかしながら、観察開始時と観察終了時のeGFR低下率による解析では有意差を認めなかった。この原因としては階層化したCKDステージG3a群の例数が少ないことによる検出力の不足が考えられた。今後は更に症例数を増やし、検出力の向上を図るとともに、他のバイアスについても考慮し解析を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慢性腎臓病の患者数は、ある程度順調に確保することができた。また、遺伝子解析も順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
積極的に慢性腎臓病の患者数を増やすようにし、多数例での解析を行い、腎障害進行へのABCG2の関与を明確にする。今後、どの程度患者数を増やすことができるかが課題である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が58612円であり、次年度のDNA調製及び遺伝子解析などに次年度予算と共に用いる。
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