研究実績の概要 |
昨年までに、CKD患者を対象に、ABCG2の推定機能の腎機能の低下速度への影響を検討し、eGFRの推移において、推定ABCG2機能と観察開始時からの時間経過の交互作用に有意性が確認されたが、症例数が十分でなく、現在、症例数を増やしている。そこで今回、健常者1885名(eGFR>60 mL/min/1.73m2)を対象とし、同様な解析を行った。 方法:健康診断結果を用い後ろ向きコホート調査を行った。すべての対象者のABCG2のSNPs(Q126X、Q141K)を解析し、各対象者の臨床検査値と実施アンケート調査結果と結合させ、データセットとした。 結果:反復測定モデルのANOVAで、血清尿酸値6.0㎎/dL以上かつ60<eGFR<=90mL/min/1.73m2のグループにおいて、9-10年の長期の時間経過により推定ABCG2機能率50%以下群が他の推定ABCG2機能率群に比べ有意に腎機能が低下した(n=406, p=0.047)。更に観察開始時点での年齢・性別(男性のみ)・eGFR・BMI・血清尿酸値で調整し(傾向スコアによるマッチング)、LMEモデルによる解析をした場合にも同様にABCG2機能低下により腎機能低下が加速した(n=305, p=0.0485)。この集団における観察期間中の平均血清尿酸値は各群間に差はなかった。 結論:9-10年間の長期の後ろ向きコホートから、健常人においてABCG2が腎保護的な機能を有していることが示唆された。また、この機序として、血清尿酸値6.0㎎/dL以上かつ60<eGFR<=90mL/min/1.732の集団において、観察期間中の平均血清尿酸値に差異はなかったにも関わらず、推定ABCG2機能率低下により有意な腎機能低下促進が確認されたことから、ABCG2の機能低下により惹起される高尿酸血症とは異なる機序が考えられた。
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