研究課題
基盤研究(C)
核内受容体転写抑制補助因子SMRTは、甲状腺ホルモンに対する作用とは独立した強力な体重制御因子として機能することを報告した(Shimizu H, et al. PLoS One 2019)。また、LC-MS/MSを使ったプロテオミクス解析により、全身SMRT欠失マウスの肝臓ではレチノイン酸代謝酵素群の高発現を認めた。これにより肝臓でレチノイン酸の分解が亢進している可能性が示唆された。これらの研究結果は、レチノイン酸の減少が臓器の脂肪蓄積を誘発するメカニズムを明らかにする上で重要な知見である。
核内受容体転写抑制因子
飽食が社会問題となる一方、栄養素のレチノイン酸(ビタミンA)の不足はかえって肥満を誘引するという報告が増えているが、詳細機序は不明である。SMRTはレチノイン酸受容体に結合し遺伝子転写を抑制する分子である。筆者は、本研究でSMRT欠失マウスは内臓肥満(脂肪肝)をきたすことを報告した。更に同マウスの肝臓を質量分析器で詳しく解析し、肝臓内でレチノイド代謝酵素群が高発現することを確認した。即ちSMRTが代謝酵素群の発現を制御し、肝臓でのレチノイド消費を防ぐことにより、全身の内臓脂肪の蓄積を抑制する機序が考えられた。本結果はSMRTを標的とした新たな肥満治療の開発につながる可能性を示唆する。