癌の治療抵抗性のメカニズムとして、癌幹細胞の存在が知られており、幹細胞性を有する癌細胞が腫瘍の再発、転移等の悪性化に寄与している事が報告されている。私達は幹細胞性の維持に鉄代謝が必要であることを見出し、鉄代謝を阻害する鉄キレート剤を癌細胞投与すると、増殖抑制効果と複数の幹細胞性マーカーの発現が阻害される事をin vitroおよびin vivoで示した。また、食道癌切除症例(134例)について幹細胞性マーカーNanogの発現と予後について検討を行い、Nanog高発現症例は予後が悪い事を明らかにした。これらの結果より、鉄キレート剤は治療困難であった癌幹細胞の新規治療法となり得る可能性が示された。
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