研究課題/領域番号 |
18K08588
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤本 浩司 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (60456027)
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研究分担者 |
黒田 正幸 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (00253005)
三階 貴史 千葉大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (00375685)
窪田 吉孝 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (10375735)
長嶋 健 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (60292710)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳癌 / 抗体療法 / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は患者から取り出した脂肪細胞にex vivoで遺伝子改変を行い、再び体内に戻し、長期的に持続可能な抗HER2抗体療法開発するための基礎的検討を行うことである。レンチウイルスベクターを用いて、抗HER2抗体遺伝子のヒト前駆脂肪細胞への導入を行い、細胞培養上清中への抗HER2抗体産生とHER2蛋白への結合が前年度までの実験で確認されていた。 本年度は産生された抗体のIn vitro及びIn vivoにおける抗腫瘍効果の確認を行った。まずはHER2陽性細胞株を用いて、In vitroにおける細胞増殖抑制効果の確認を行ったまず、HER2-ccdPAの培養上清を添加すると、HER2陽性乳癌細胞では有意に増殖抑制効果が認められたが、HER2陰性乳癌細胞では有意差は認められず、HER2陽性細胞特異的な直接的増殖抑制効果が確認された。次にHER2陽性乳癌細胞とIL-2で活性化させた末梢血単核細胞PBMCを抗体産生前脂肪細胞及びコントロール-前脂肪細胞培養上清とincubateすると、有意に死細胞が増加した。また、この活性はエフェクター細胞比の増加に応じて上昇することも確認され、培養上清中抗体のADCC活性による間接的抗腫瘍効果も確認された。 次に、抗体産生前脂肪細胞をヌードマウスに移植し、in vivoモデルを作成した。まず移植後のマウス血清中に抗体が産生されているかを経時的に観察した。同マウスの血液中にはELIZAでヒトIgGが検出され、持続的に抗HER2抗体が産生されていることが確認された。引き続き、HER2陽性乳癌細胞株であるBT474の担癌マウスに対する治療実験を行った。コントロール群では腫瘍の増大が観察されたのと比較して、遺伝子導入前駆脂肪細胞移植マウスでは腫瘍の増殖抑制が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗HER2抗体遺伝子導入ヒト前駆脂肪細胞のin vitro及びin vivoでの抗腫瘍効果を確認することができた。そのため、研究課題はおおむね順調に進展している、と考えている。今後は、この実験モデルをもとに、抗体産生がどれくらいの期間まで持続可能であるかの検討や抗体産生能を向上させるのに必要な条件の検討をさらに進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
抗腫瘍効果の確認されたモデルにおいて、抗体産生前脂肪細胞の分化・成熟が抗体発現に及ぼす影響について調べたり、移植時に何らかの処理を行うことで抗体の血中濃度に変化が起きるかの検討を行ったりする予定である。 さらに、臨床的には抗体療法は併用療法も行われており、結果として、より高い腫瘍抑制効果が確認されているものが多く存在する。抗HER2療法においても、臨床的に標準治療となっている併用療法がある。我々の実験系でも、複数の抗体産生による治療を目指し、より現在の臨床に即した形での臨床応用が可能かの検討を行っていく。
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