研究課題
本研究の目的は患者から取り出した脂肪細胞にex vivoで遺伝子改変を行い、再び体内に戻し、長期的に持続可能な抗HER2抗体療法開発するための基礎的検討を行うことである。レンチウイルスベクターを用いて、HER2受容体細胞外領域domain IVに作用する抗HER2抗体遺伝子のヒト前駆脂肪細胞への導入を行うと、細胞培養上清中へ抗HER2抗体が産生されることが確認される。加えて、産生された抗体はIn vitroではHER2陽性細胞に特異的に結合し、直接的増殖抑制効果及びADCC活性による間接的抗腫瘍効果も確認され、In vivoではBT474担癌マウスモデルにおいて、コントロール群と比較して、遺伝子導入前駆脂肪細胞移植マウスでは腫瘍の増殖抑制が観察されることが、前年度までの実験で確認されていた。本年度はより臨床使用に即した複数の抗HER2抗体療法による長期維持療法の基礎的検討を行った。そのために、新たにHER2受容体細胞外領域domain IIに作用する抗HER2抗体を作成し、前回同様にHER2陽性細胞への特異的な結合を確認した。また、抗体産生の至適条件検討を行い、遺伝子導入前脂肪細胞に対し脂肪分化誘導刺激を行った上で移植することの有用性が示された。これらdomain II及びIVに対する抗体産生遺伝子導入前駆脂肪細胞を用いてKPL-4高悪性度HER陽性乳癌細胞株によるマウス担癌実験を行い、併用細胞療法の単回投与のみでマウス血清中への持続的な抗体産生が確認され、単独療法より併用療法で高い抗腫瘍効果が発揮されることが証明された。
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