研究課題
本研究では前年度よりコロナウィルス感染症の影響を受け、臨床、基礎両部門の活動が滞った分、今年度まで延長し研究を遂行した。本研究は、難治性の慢性炎症性疾患である炎症性腸疾患(IBD)における、特に腸管臓器特異的血管内皮の性状とその機能、内皮由来のアンジオクライン分子の動態解析、また分子シグナルを介した造血系、間葉系等の各種系統細胞、炎症性サイトカインとの相互作用を包括したIBD病態、病勢の制御機構の解明を主な目的としている。今年度の研究で、研究分担者らは、疾患モデルマウスの実験を通じて、化学療法剤、サイクロホスファマイドの少量持続投与により、内皮由来のアンジオクライン因子IL-6、TGF-β、TNF-αの動脈系血管での発現や産生、そして炎症性サイトカインであるIFN-γ、IL-1、IL-10の産生が阻害されることにより、造血幹細胞動態の制御を通じ、末梢病変組織中への炎症性細胞動員の抑制、一部の慢性炎症性疾患の病態を有意に改善することを報告した。研究成果は、本研究目的である骨髄中の臓器特異的血管内皮が構成するアンジオクラインシステムによる造血幹細胞動態の制御仮説と合致するものであり、また炎症性サイトカイン産生との相互作用を通じた、アンジオクライン因子を標的とする新しい抗炎症療法の可能性を示唆したものである。IBD患者から継続的に血液を採取し、重症度、合併症、各種治療法に前後おける血中のアンジオクライン因子測定の他、末梢血、腸管組織中のフローサイトメーターによる細胞構成、腸管組織特異的血管内皮細胞の性状、機能、遺伝子解析に加え、ニッチ構成の解明を進めた。血球成分除去療法の治療前後における変化が治療効果に影響をおよぼすことが示唆され、今後はIBD患者における治療効果予測因子として、あるいは疾患活動性を示すバイオマーカーとしての活用が示唆された。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
Therapeutic Apheresis and Dialysis
巻: in press ページ: -
10.1111/1744-9987.13823
Frontiers in Medicine
巻: 8 ページ: -
10.3389/fmed.2021.789037
Journal of Clinical Medicine
巻: 10 ページ: 1749~1749
10.3390/jcm10081749
Cancers
巻: 13 ページ: 1014~1014
10.3390/cancers13051014
International Journal of Molecular Sciences
巻: 22 ページ: 2304~2304
10.3390/ijms22052304