研究課題/領域番号 |
18K08685
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
永井 英司 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (30264021)
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研究分担者 |
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 講師 (20452708)
宮坂 義浩 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40507795)
藤田 逸人 九州大学, 医学研究院, 助教 (40611281)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌 / NETs / 肝転移 / CAFs |
研究実績の概要 |
豊富な間質を特徴とする膵癌においては、癌間質相互作用が腫瘍の転移・浸潤に大きな役割を果たしているが、その一例として、好中球細胞外トラップ(Neutrophil extracellular traps:以下NETs)が癌関連線維芽細胞(Cancer-associated fibroblasts:以下CAFs)を活性化し、転移促進的な微小環境を形成する可能性が示唆されている。本研究においては、膵癌肝微小転移巣のCAFsの誘導におけるNETsの役割を明らかにし、肝転移を制御する治療標的となりうるか検討することを目的としている。 前年度から今年度にかけて、膵癌自然発生モデルのKPCLマウスにおいて、膵癌内でNETsが誘導されていること、微小肝転移巣においてCAFsの誘導に先立ち好中球の集簇がみられること、NETs阻害剤(DNaseⅠ)を投与することで肝転移の形成が抑制され、CAFsの誘導が抑制されることを示した。また、in vitroにおいて好中球と膵癌細胞を間接共培養すると、膵臓癌細胞がNETs形成を誘発し、その結果NETsが肝転移におけるCAFsの起源である可能性のある肝星細胞の誘導を促進することを示した。 以上の内容について論文を作成・投稿し、2019年12月International Journal of Oncologyにてpublishされた。 次に、NETsが肝転移を促進する機序を解明するための新たなマウスモデルの構築や、ヒト試料を用いた実験モデルの作成を試みているが、結果には至っていない。また、切除検体のsingle cell mRNA transcriptome 解析のデータから、実際のヒト癌組織中の好中球の転写状態を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに研究計画の①~④までは終了しており、あとはNETsの肝転移機序のさらなる解明と新規治療薬開発の目標を残すのみである。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの肝転移モデルを用いて、NETsによる肝転移促進機序を解明する。微小転移巣での好中球・肝星細胞・CAFsの状態変化を解明するために、それぞれの細胞の経時的な変化を観察する。計画の一例としてフローサイトメトリーによるソーティングとシングルセルmRNA解析を用いて、発現の変化を追う、など計画している。 また、ヒト試料を用いた新たなマウスモデルの構築(ヒューマナイズドマウスの確立、肝転移モデル作成など)を並行して続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画は概ね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度はフローサイトメトリーによるソーティングに必要な試薬、シングルセル解析などの受託解析費用、マウス費などを予定している。
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