研究課題
LRRFIP1(GCF2)は、Dishevelledとの相互作用を介してWnt signalのactivatorとして機能、癌細胞の上皮間葉転換(EMT)を促進すること、転移形成に深く関与することが明らかにされている。さらに、膵癌臨床検体でLRRFIP1は正常組織との境界、いわゆる”invasion front”で高発現していることから、癌微小環境において細胞外基質との相互作用より、その悪性化に関与していることが示唆される。本研究では、そのWntを介したEMT促進機構より、抗癌剤投与時の薬剤感受性メカニズムにどのように関与するか、明らかにすることを主要な目的として研究を行った。これまでの研究により、膵癌細胞でLRRFIP1をSiRNAにより発現抑制することで、ゲムシタビン感受性が上昇することが明らかとなった。また、そのメカニズムとして、ゲムシタビン投与によりJNK (c-Jun N-terminal kinase)及びc-Junの活性化が増加することで、アポトーシスが誘導されていることを明らかにした。これらの知見をもとに膵癌細胞株を5種類に増やして、LRRFIP1の発現抑制によりゲムシタビン感受性が増強するか確認した。予想通り全ての細胞株でゲムシタビン添加によりアポトーシスが誘導され感受性が増加していることが確認された。また、LRRFIP1発現抑制細胞における、ゲムシタビン添加時の、JNKおよびC-Jun活性化メカニズムについて詳細な検討を行った。ゲムシタビン 添加時のJNKおよびC-Jun活性化にJNKおよびC-Jun活性化が阻害されることが明らかとなった。以上の結果より、LRRFIP1は、WntおよびEMTを制御することで、SAPK/JNK signalを抑制することで、ゲムシタビン感受性を低下させていることが、強く示唆された。
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Pancreatology
巻: 21 ページ: in press
10.1016/j.pan.2021.02.018.