本研究では幼児期に与えられた疼痛刺激によって、成長後に多動性行動が生じる可能性が示唆された。また成熟後脳におけるc-Fos発現の解析から、梨状皮質領域の神経細胞の活性化を認め、幼児期疼痛刺激を受けることで、ストレス応答への変化が生じている可能性が示唆された。一方、活性化の認められた脳領域からのグリア細胞の分離が困難であり、本研究ではより広範囲の大脳皮質および脊髄から分離精製したミクログリアにおいて、活性化マーカーやサイトカインの遺伝子発現を解析したが、コントロール群と疼痛刺激群において明らかな遺伝子発現の差は認めなかった。今後は局所組織からの分離および網羅的な遺伝子解析が必要と考えられる。
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