研究課題
腸管には粘膜を被覆する粘液層やグリコカリックスにより形成される粘膜バリアが存在し、腸管上皮組織への腸内細菌の侵入を防いでおり、これらの機能により生体防御機構を担っていると考えられる。侵襲時には粘膜上皮の萎縮や腸管機能障害を来すことが知られており、早期経腸栄養を行うことで、その機能改善、生体防御機構が維持されることが報告されている。しかし、腸管細胞表面のグリコカリックスの構造や侵襲時におけるその変化についての報告は少ない。そこで、腸管粘膜バリアの正常な3次元構造を同定し、生体侵襲が腸管に与える影響について超微形態学的に検討するために10週齢オスのC57BL6マウスに15mg/kgのLPSを腹腔内投与した。投与48時間後の胃上部、中部、下部、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸を取り出し、液体窒素を用いた凍結割断法によりサンプルを作成し、その超微形態を観察した。正常マウスでは、十二指腸~下行結腸において、グリコカリックスにより微絨毛構造が覆われ、細胞の間隙も満たされていた。また、腸管毛細血管の内腔はグリコカリックスで覆われていた。しかし、LPS投与48時間後後のマウスでは、腸管毛細血管において血管内皮を覆っているグリコカリックスが脱落しており、血管内皮表面が内腔に露出している状態であった。また、腸管では微絨毛が脱落し、腸管上皮グリコカリックスの剥離や菲薄化により、細胞の間隙だけでなく微絨毛間の間隙を確認することができた。生体侵襲により腸粘膜バリアであるグリコカリックスが傷害されることが確認された。また、同時に毛細血管においても同様にグリコカリックスが傷害されており、腸管粘膜障害は血管内皮障害に起因するものであると思われた。
2: おおむね順調に進展している
腸管上皮グリコカリックスの形態を同定し、侵襲によりその構造が崩壊することを確認できている。
敗血症性血管炎により腸管粘膜バリア変化が同定できたが、今後は腸内細菌叢の検討を行うとともに、この障害された粘膜バリアがどのような過程で修復していくのかについて検討を行う。
差額が10000円以下であることから、当初予算と実使用額に誤差を生じたもの。この差額に関しては、研究遂行に必要な物品などの充当する
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