研究課題/領域番号 |
18K08892
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
田島 吾郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00437427)
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研究分担者 |
松本 直也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (50359808)
山野 修平 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (60570538)
梅原 敬弘 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (60617421)
池松 和哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80332857)
田崎 修 長崎大学, 病院(医学系), 教授 (90346221)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パターン分析 / 炎症 / 感染 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究で、病態別に自然免疫受容体の遺伝子発現に特徴的なパターンがあることを報告した。今年度は遺伝子発現のパターンに基づいた解析が、重症度に関係なく病態を判別できることを明らかとして、2020年の米国外傷学会に口演で発表することが決まっている。 C57BL/6マウスを用いて、Sham、重症度の異なる炎症モデルとして、敗血症モデルは18Gと25Gの針を使用した盲腸結紮穿孔モデル(Cecal Ligation and puncture: CLP)、広範囲熱傷モデルは熱傷面積(Total Body Surface Area:TBSA)20%と10%の5群を作製し、受傷から24時間後に、全血からRNAを抽出し、定量的RT-PCRを用いて遺伝子発現を測定した。TLR2、TLR4、NLRP3およびMyD88の遺伝子発現は、Shamと比較してすべてのグループで有意に増加した(p<0.05)。TLR9の値は、Shamと比較して両方のCLPグループで有意に減少した(p<0.05)。全ての測定データは、相対値としてパターン化するため、パラメーターの最大平均値で割った値にスケーリングして、実測値とパターン化した値でそれぞれ正準判別分析(CDA)を施行し、重症度に関係なく、病態に応じて診断率を比較した。CDAでは、パターン化した値を用いた方が、実測値と比較して、より明確に病態を判別すること可能で、Sham(88.5% vs 100%)と、Burn(88.2% vs 99.5%)では有意に判別率が高かった(p<0.05)。 遺伝子発現のパターンを解析する方が、実測値を比較するよりも、重症度に関係なく病態を識別可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験においては、敗血症、熱傷モデルにおける遺伝子発現のパターン解析と、重症度と関係なく病態をパターンで判別できることを明かとした。しかし、臨床業務の多忙、マンパワー不足のため、細胞内蛋白発現の測定系が確立できておらず、蛋白レベルでの発現パターンの解析ができていない。臨床検体を用いた研究では、同様の理由によりヒト検体での測定系が確立できておらず、発熱患者の検体が十分に集まっていないことにより、研究が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も病態特異的な遺伝子発現パターンの解析を、さらに重症度、時系列を加えて、進めていく。蛋白発現については自然免疫受容体、シグナル分子群の細胞内染色法の技術的な問題点を解決して、測定系の確立を目指す。また、発熱患者の末梢血白血球における自然免疫受容体、シグナル分子群の発現についても、測定系を確立する。また臨床検体を集めて、動物モデルと同様な解析が可能かどうか評価するための基礎データの収集まで進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
発熱患者の臨床検体を用いた測定が遅れていることと、蛋白発現の測定系の確立、遺伝子組み換え動物の導入の実験が進まなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は臨床検体を用いた遺伝子発現の測定をすすめて、動物実験ではアレルギーモデルの遺伝子、蛋白発現も含めて、RNA抽出キット、PCRのプライマー、蛋白の細胞内染色の測定系確立のための抗体、消耗品、キットに使用する予定である。また、成果発表のための学会費、旅費にも使用予定である。
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