研究実績の概要 |
膝OAの病態の主座は軟骨変性および摩耗であるが, 我々は, 二次的な滑膜炎と膝OAの臨床症状は, 関節軟骨の変性や摩耗の程度以上に相関することを示してきた. これにより, 膝OAにおける病態の主座である軟骨のみではなく滑膜や軟骨下骨に焦点をあてその病態を解明することにより, 膝OAの分子レベルの病態解明が進み, 課題解決につながると考えた. 本研究は, 膝OAにおける滑膜に発現するプロテオグリカンであるパールカンの機能の詳細および軟骨下骨病変との関連を分子レベルで解明し, 膝OAの滑膜炎を制御しうる分子を探索することを目的とする. 3年間で、膝OAマウスモデルを用いて、下記実験を計画した. ①パールカンの発現の有無による滑膜の炎症性メディエーターの発現の違いの検出.②炎症性メディエーターと軟骨下骨の変化を評価. ③軟骨下骨の変化に寄与する炎症性メディエーターとパールカンの機能解析.④標的分子による膝OAの治療効果の検討. 30年度は①に関して結果を得た. 膝OAにおいて滑膜パールカンが欠損すると組織学的滑膜炎がコントロールに比べ強く, TNFα, TGFβ, CCL21, VEGF、CD31などの炎症性メディエーターも上昇することが分かった. しかし, 滑膜パールカンが欠損すると関節近傍での滑膜様細胞の凝集部分が軟骨棘への分化が抑制されていた。滑膜パールカンが欠損による滑膜炎の増強の1つの原因は骨棘分化のTGFのシグナルが入らないことによるネガティブフィードバックが考えられた. 今後得られた炎症性メディエーターに関して②以降の研究を継続する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室の移動およびマウスの移動に伴い, 使用可能マウスが生まれなかったことにより実験の遅延が起こった. そのため, 物品の購入に滞りを生じた. 本年度は, マウスは予定通り生まれており, 実験室の移動も終了したため, 昨年度の実験遅延部分を回復できると考える. 昨年度使用遅延分は, 主に物品費であるが, 遅延実験の遂行により物品を購入し, 本年度予算を使用する.
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